STONE さんの感想・評価

4.1
物語 : 4.5 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 4.5 状態：観終わった

本質的部分はシリアスもの？

　原作は未読。
　原作の巻数などから想像するに一部をアニメ化したのだろうが、他作品だと途中で終わって
しまった感じが強かったり、途中をカットしたのが露骨だったりするものが多い中、この作品は
1クールの1本の作品としては、割とうまくまとめられている印象。

　まず、キャラの組み立てがいいなと思った。
　印象的だったのはメインヒロインの筒隠 月子で、抑揚のない喋りは中の人である小倉 唯の
演技もあって、変に癖になる。
　感情を表面に出せないという設定は、やはり他作品で見られる寡黙系、クール系のキャラとは
違うようで、表情や声のトーンこそ淡々としているものの、感情自体は激しく、発言量も多弁
だったりするのが面白い。
　特に横寺 陽人、小豆 梓、筒隠 つくしといった他のメインキャラが喜怒哀楽が激しく表に
出てくる動的キャラゆえに余計に月子の存在感が際立つ。
　他のキャラもよくありがちな設定っぽいが、ちょっと捻りがあったりして、なかなかいい。
　同系統の他作品に較べるとキャラ数が絞られている感じで、華やかさには欠ける印象も
あるが、その分一人一人の描き方が深く、「とりあえず出してみました」的な無駄な印象の
キャラがいないのは好印象。

　ジャンルとしてはコメディの範疇に入れられる作品なのだろうが、キャラのやり取りが
コメディタッチだったり、ドタバタがかなり盛り込まれているものの、ストーリー自体はあまり
笑わせようという感じがなく、本質的な部分はファンタジー要素のあるシリアスものといった
方がよさそうな印象。
　ファンタジー要素の要である願いを叶える猫神様だが、この願いの叶え方がかなり回り
くどく、意地の悪いやり方であるのがドタバタを生むポイントだったりする。
　後半はこの回りくどさが輪を掛けてひどくなった感じで、良くも悪くも展開が複雑化して
いく。話自体はストレートには伝わりにくくなったものの、筒隠姉妹の過去の記憶と現実の相違
などのミステリー要素が加味され、この辺の謎解きが話を引っ張っていく感じ。

　終盤に至って陽人が10年前に願ったことが、筒隠姉妹の記憶問題や陽人の過去を
思い出せないことなどの全ての原因となっていることが明らかになり、ドラマとして割と面白い
ものに仕上がっていた。
　陽人の過去にあったことを忘れてしまうことに関しては、序盤からそういった描写が多く、
陽人のキャラの雰囲気から単にいい加減な性格のように感じられたが、これはミスリードだった
ようで、この辺の仕掛けは上手いなという印象。

　ラストで陽人が月子にちゃんとキスをしたのは意外。
　この手の作品はあくまでアクシデント的なキスだったり、いざキスという時に邪魔が入ったり
することが多かったので。
　もっとも梓にもキスをしているわけで、どっちつかずである部分は他のハーレムものと
同じか。