三崎鳴 さんの感想・評価
4.8
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
復讐は何も生まない
アレクサンドル・デュマ・ペールの小説『モンテ・クリスト伯』(1845年)を原作としたアニメーション作品。2005年の東京国際アニメフェアでテレビ部門の優秀作品賞を受賞した。SF的世界観の構築、視点の変更など原作より大幅にアレンジされており、原作とは別物のオマージュ的な一作品として評価したい。本作を評価する上でまず欠かせない要素は映像美である。テクスチャの利用により情緒的かつ崇高な雰囲気を表現しており、中心となる登場人物は貴族である為これが非常にマッチしている。作画に関してはアニメファンなら映像として一見の価値あり、野心的な挑戦とも言え、耽美の精神が汲み取れる。EDの映像などは特に磨きがかかっており、アニメーションという枠組みの中で、本作もまた一種の芸術作品といえよう。さて、内容についてだが、話の根幹となるのはパリを舞台とした復讐劇である。かの有名作品“コードギアス”も同様に復讐が根幹にあったがあちらとは違い、復讐される側の視点から徐々に謎が明らかにされていく構成を取っている(原作小説では復讐者側の視点)。序盤こそ淡々と話は進行するものの徐々に復讐の輪郭が見えてくる構成はミステリ仕立てでもあるが盛り上がりどころは終盤にある為、中盤までは平坦(それでも飽きをこさせないのは作家の力量か)。特に18話以降は息が詰まる展開の連続で波のように盛り上がりが押し寄せる。正にクライマックスのために用意された伏線と布石。へたれ主人公の成長と、巌窟王の行く末…深い感動を禁じざるを得ない。近親相姦や自慰など背徳的なエロスの描写も一部あり、内容的にもジャンル的にも視聴者を選ぶタイプの作品だが、紛れもない傑作であることは間違いない。『待て、しかして希望せよ。』