おぬごん さんの感想・評価
4.8
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
思春期を瑞々しく描いた傑作
思春期の少年少女の心理を鮮やかに描いた傑作。
原作の温かく柔らかな雰囲気を再現した淡いタッチ、
それによる情景や細かな描写、秀逸なカメラアングル、BGMも巧みに用いた心理描写と、
あおきえいと岡田磨里のタッグが互いの長所を存分に発揮した。
原作は主人公が小学生の時点から始まるのだが、
小学生編を丸々カットし中学生編からスタートさせる大胆な構成を取りながらも、
しっかりと一つの作品に仕上げた点は見事。
上級生、大人にベテラン、主人公世代に若手を起用するキャスティングも素晴らしい。
後述するネタバレ要素が繋がった最終回は、まさに大団円。
OP、EDも名曲。
TV放送版の10話はBlu-ray, DVD版の10, 11話の再構成版にあたるので、
TV放送で見ていた人も、ぜひBlu-ray, DVD版でもう一度見て欲しい。
{netabare}
物語は主人公である「女の子になりたい男の子」二鳥くん、
「男の子になりたい女の子」高槻さん、
そして2人の友人で、小学校時代に2人と秘密を共有していた千葉さんの3人を中心に展開される。
この3人、物語当初の中学校入学時点では 千葉→二鳥→高槻 という三角関係のような状態にある。
しかし物語を経てそれぞれが様々な人々との触れ合いを通し、その心情と関係が変わっていく。
千葉さんは二鳥や友人たちとの演劇の脚本製作を通し、
他人に自分が望む感想を押しつけることの無意味さを知り、
自分が二鳥に抱いていた「幻想」に気付く。
高槻さんは千葉さんや安那ちゃんに女子としての自分を肯定され、
「女であることが嫌な自分」が揺らいでいく。
そして二鳥は「女の子になりたい自分」として踏み切った物語終盤の大胆な行動、
それに対する周囲の人間の反応、男としての自分を受け入れてくれる安那ちゃんの存在、
そして自身の身体的な成長を通し、「女の子になりたい男としての自分」を受け入れる。
これらの成長は原作ではもう少しじっくりと描写されるのだが、
アニメではオリジナルの描写を絡めつつ自然に描かれていて素晴らしい。
10話サブタイトルでもある「ぼくだけ笑われた」とふさぎこんでいた二鳥が、
自身の声変わりを「これでいいんだ」と受け入れ、
皆が見守るステージへと女の恰好で踏み出すラストは、これ以上にないほどの大団円だった。
{/netabare}