yapix 塩麹塩美 さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
卓球部だったけど、、、真面目にやらなかったな~(遠い目)
ピンポンがスピリッツに連載されていた当時、
私はスピリッツを毎週買って読んでいた。
だが、ピンポンは読まなかった。
絵があまり好きではなかったから。
当時の私に言ってやりたい!
・・・グッジョブ!!と。
おかげでまっさらな気持ちでこの作品と向き合うことができた。
このような僥倖を感謝しよう、なにかに。
極上のエンターテイメントである。
あらゆるものが詰まっている。
才能、努力、勝負、絶望、後悔、歓喜、未来、過去、愛、そして友情。
優れたエンターテイメント作品の例にもれず、
そこから得られる感動は一義的なものではない。
観る側の年代、立場、階層、経験などによって、
作品のどの部分に共感、共鳴、納得、反発するかによって、
多義的な感動を得ることが可能である。
ペコ、スマイル、アクマ、ドラゴン、チャイナ達とも、
バタフライジョー、オババ達とも世代を異にする私にとっては、
彼らのちょうど中間の世代に属する私にとっては、
むしろそれが故に、
双方の立場で共感することができた。
遠い記憶の中に眠る若かりし頃のがむしゃらな情熱、
冷めきってはいないその熱が微かに呼び起される感覚。
まだ先の未来ではあるが確実に忍び寄る死の影、
もはや未来よりも過去に重きを置く年代に近づきつつある現実、
だからこそ、
未来ある者に託したくなる想い。。。。。
作品中のクライマックスは、
{netabare}ペコ VS ドラゴン である。
異論もあろう。
しかし、ペコがヒーローへと回帰し再生されていく過程とドラゴンがプレイする喜びと再会し生きはじめる過程とが同時に進行するこのゲームこそがクライマックスであると言いたい。
二人はこのゲームで己が何者であるかを知ることができたのである。 {/netabare}
この作品の美点はいろいろあると思うが、
私が考える最大の美点は、
押しつけがましくないところである。
愛も友情も根性もたっぷり詰まっているのだが、
そういうニオイが漂ってこない。
あんな暑苦しい絵なのに爽やかなのである。
うん。原作買おう!
原作一気読み!
以下、原作との比較を含むネタバレレビュー
{netabare} 原作においてもクライマックスはやはり
ペコ VS ドラゴン
である。
これは、もしかすると松本大洋自身にも予期できなかったことかもしれない。
もちろん、この作品は、スマイルとペコの物語である。
しかし、スマイル VS ペコ は
試合としても、物語の締めてしても、予定調和である。
自分自身がヒーローとなることを望まず、
ひたすらヒーローに救済されることを願い続けたスマイル。
スマイルにとってのヒーローとは終始ペコである。
否、スマイルにとってペコはヒーローであらねばならなかった。
その願い、というより、強要に最高の形で応えるペコ。
決勝戦でスマイルの前に現れたのは、完全無敵のヒーローであった。
ドラゴンとの神々しい戦いを経て、
伝説のドラゴンを退治したことによって、
完成されたヒーローへと成長したペコであった。
ヒーローの再臨を祝う儀式として、
スマイル VS ペコ
は存在している。
この試合は、もはや、二人による祝祭である。
ペコ VS ドラゴン のクライマックス感については、
アニメ版に軍配を挙げたい。
やはり、ドラゴンの人間離れしたストイックな生き方、苦悩、孤独を丁寧に描いてきたアニメ版の方がドラゴンの救済に共感しやすい。
また、空飛ぶヒーローのイメージを散りばめたアニメ版の表現もこの戦いの特別な空気を描くうえで正解だったと思う。
アニメと原作に本質的な差異はない。
敢えて言及するのであれば、
原作は、完全にペコとスマイルの物語と言える。
アニメは、ドラゴンとチャイナのキャラクターを掘り下げいる分、群像劇的な趣がある。
といったところであろうか。 {/netabare}