westkage。 さんの感想・評価
4.0
物語 : 3.5
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
視聴し終わった後の感触が「劇場版作品」のよう。作画は素晴らしく、物語も‘概ね’満足です。
本作は渡辺信一郎が原案・監督を務めるオリジナルアニメーション作品です。
2014年7月より、全11話で放送されました。
原作・監督=渡辺信一郎(代表作:カウボーイビバップ・サムライチャンプルー)
キャラクターデザイン=中澤一登(代表作:サムライチャンプルー・明日のナージャ)
音楽=菅野よう子(代表作:マクロスF・創聖のアクエリオン)
制作=MAPPA
あらすじ・・・青森の核燃料再処理施設で高校生の主人公「九重新」と「久見冬二」はプルトニウムを強奪する事に成功した。その半年後2人はある目的を達成するため「爆破テロ」を実行する。主人公と同級生のヒロインである三島リサはたまたまテロの現場に居合わせてしまい、2人が首謀者である事を知ってしまう。しかし学校ではいじめを受け、家ではノイローゼ気味の母と2人暮らしを送るリサは自分の居場所を2人に見出してしまい計画に加担していく事となる。そして3人の国家を相手としたテロが幕を開ける・・・といった感じです。
物語の主人公が「悪」である事はそれほど珍しくはありませんが、テロリストという「社会悪」を演じるのは非常に斬新です。しかも近未来・中世や海外を舞台にした荒唐無稽なものではなく現代社会の日本が舞台になっていることからリアリティは高いです。もちろんテロリズムは許される思想ではありませんので世論を考えれば非難は免れない危険性はありますが、敢えて難しい表現方法を選択している所は凄いなと思います。
テロリズムという取り上げるテーマが壮大なだけに誰もが納得するような着地点は無いと思いますが、投げっぱなしのボールにはならないで欲しいと思いながらの視聴開始でした。
視聴を終えての総評として「テロという題材に斬新さを感じはするものの、ストーリー構成としてはありがちな話に落ち着いた。しかし作画の評価は非常に高く、また作品としての完成度は高い。見終えたときの感触は劇場作品に近い出来栄え」といった感じですね。ストーリーの大筋としては「国家クラスの陰謀に対しての復讐劇」となっているので、どこかで見た話になってしまうのは仕方無いですね。ただ他の作品でもやっている事なのに今作は「テロ」という表現になっている理由としては、そういう作品は大体が「主人公が特殊能力を持っている」という事だと思います。普通の人間である彼らが国家に立ち向かうには「テロ」という手段にならざるを得ない、そういうことではないでしょうか。付け加えるならもう一つの理由は「大義名分が無い」という事ですね。今作の場合、復讐する事で多くの市民を守ったり救ったりという結果が得られるわけでは無いですからね。
ただ今作が世間一般的に行われている「テロ」と同じものなのかというと、そこは違うような気がします。題名にやや惑わされてしまいますが、あくまで大きな組織に対する復讐劇を描いた物語ですので「残響のテロル」という題名でさえなければ、この事に関しても大きく論ずることは無かったのかもしれません。私としてはもう少し社会的・政治的風刺が入るような作品なのかと視聴開始当初は思っていたので、少し肩すかしを食らった感は否めませんでした。まあそこまでやってしまうと、本当に収集付かなくなりそうですけどね。
ですので、少しテロという言葉から離れましょう。その上で賛否両論が飛び交う今作を評価してみると、正直11話では若干‘尺が足らない感’があった作品ではありましたが、個人的には高評価を付けられる作品でした。2クールでやってくれれば、もう少し物語や人物を掘り下げて描写出来たと思いますし、最終話の結果に関しても感情移入を見込めたと思います。作画に関しては一貫して高いレベルを維持し続けていたので好印象でした。
キャラクターに関して。良い設定を持っているキャラばかりでしたが、感情移入を強めないと盛り上がりに欠けるタイプの作品なので、その辺りが少し弱いなと感じました。ストーリーが難解なだけに全11話での「キャラの掘り下げと物語の掘り下げ」の配分が難しかったのかも知れませんね。少し勿体ないなと思いました。
音楽に関してはOPテーマEDテーマ共に、作品の雰囲気にあった良い出来だと思います。
全体的に好印象な作品であっただけに、1クール完結で次回作の希望も無いという結末である事は残念でなりません。
余談ですがヒロインのリサちゃんがとても良いキャラクターをしていたと思います。性格は大人しくて見た目も地味な女の子ですので自分のタイプとは全く外れるのですが、やたらと嗜虐心を煽られるんですよね。ああいう女の子って「放っておけないから構ってやっている・俺がいないとダメな子」から始まって、最終的には「お前じゃなきゃダメなんだ」に変化してしまい気付けば自分の方が惚れていた・・・なんてパターンになりがちな子だと思います。あれ?そう考えると、なんだか少女漫画のヒロインにありそうな感じだなw