くし さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
心に響くとても綺麗な儚いファンタジーラブストーリー
竹川蛍は6才の夏の休み祖父の家へ遊びに行った。そこの山神の森で出会ったギン。ギンは人に触れるとこの世から消えてしまう過酷な運命を背負っている。そんなギンに親しみを持った蛍は毎年夏休みに祖父の家へ遊びに行き、ギンの元へ訪れるようになった。中学生になり、高校生になり、次第に魅かれ合うのだが…。
夏だけのひとときのデート。蛍は秋も冬も春も、ギンの事をずっと想っていた。
ギンも毎年、夏に蛍が来るのを待っている。
二人の温かく正直で微笑ましい愛を感じる数々のエピソードが情感をもたらす。
「デートみたいですね。」「デートなんですね。」
「行こうか。」「うん。」
こうなってくると、いつまでもこのまま幸せな日々を送ってもらいたいのだが、どうしても結末を心の隅で憶測してしまう。
長い年月をかけて育んできた愛。愛し合う二人が互いに触れたいという感情が溢れてくる。
私は思った「やばいな、あぶないぞ。」
しかし、この二人は結末を感じているのかも知れない。
蛍は「ぎん、忘れないでね、私の事。忘れないで…時間がいつか私たちを分かつでしょう。でも、その時まで一緒にいようよ。」
ギンも「飛び付けばいい。本望だ。」
とても考えさせられる深い思い。私ではとても答えを導く事ができない。
この物語、45分なのだが内容は遥かに濃い。緩やかに流れる時間と夏物語特有の切ない愛。ほんの一瞬のうちに訪れる結末に悲しみと大きな感動。そして後に残る胸を締めつける余韻で涙が止まらない。
「好きだよ。」「ええ、私もよ…。」
普通もっと長くこの感覚に酔いしれたいのだが、急激すぎて否応なしにつきつけられる苛烈な展開に自分ををコントロール出来ずに感情はマックスに到達してしまった。
これから、彼女に押し寄せるだろう悲しみに胸が痛い。
しかし、別れの際、二人の満足した表情や蛍の晴れ晴れとした姿に私は安堵する事が出来た。
想い出は生き続ける。彼女とともに生きて行く。
そして、彼の想い出の地で生きて行く、秋も冬も春も、そして夏も…。
元気な笑顔で履歴書とスーツを持って祖父の家へ出かける姿に、こっちも笑顔になった。
大変素晴しくとても心に響く作品でした。
この素敵な作品、あにこれの仲間のお陰で出会う事が出来た。いつも感謝する次第です。