退会済のユーザー さんの感想・評価
4.7
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
傑作
素晴らしいの一言に尽きる。これほど熱く、切なく、もどかしく熱狂したアニメなど今までを顧みても数える程もない。最近のアニメはどれも似たりよったり、面白みを十分に欠いていた。そんな時だったからであろうか、この作品には強く惹かれるものがあった。巨人が出てくるインパクト性があるわけでもない、女キャラに囲まれうはうはする欲求的部分の(おい)ものでもない。ではどうしてそこまで惹かれたのか。理由は簡単である。何を隠そうこの作品の持つ「雰囲気」だ。
アニメにだけでなくドラマなど映像作品においては「雰囲気」なるものは非常に重要な役割を果たす。その作品にあった演出、音楽、役者などをピックアップせねばならないからだ。「雰囲気」とはこれまた漠然としたもので視聴者からすれば捉えることが難しいものだと思われる。しかし我々はそれを根源的な部分で捉えている。共鳴している。それこそが「雰囲気」ではないだろうか。目で見えない。認識もできない。ただ、体が感じている。得体もしれない何かを。
この作品はその「雰囲気」が抜きん出ている。見えない何かを常に受け取っているとでも言おうか、すべからく圧倒的なのだ。特別作画と音楽の良さは歴戦のアニメにも引けを取らなかった。
さて、ストーリーは簡単に言えば海に住んでいる人々と陸に住んでいる人々との交流を描いた物語である。
独特な設定に主要キャラの感情の機微が主な見所といったところ。複雑に織り成す、まるで迷路のような関係に引き込まれること受け合いだろう。アニメに安易に恋愛要素を入れれば物語は簡単にめちゃくちゃになったり、本編そっちのけでイチャイチャしたりと最悪なものになってしまう。それを本編を進めつつ程よい塩梅で放り込んでくる。やりすぎでも、やらなすぎでもなく。そんな当たり前のことにどうしようもなく心地よさを感じた。
少々ネタバレを入れるが、1クールめと2クールめでは5年という少なくない年月が経っている。序盤での子供じみていた面々が大人びた様子で登場する。そこでもまた一筋縄ではいかない感情の連鎖が描かれる。罪悪感であったり、あるいは純粋な思いであったり、あるいは恋慕からくるものであったり、より複雑に絡み合っている。
そう。この作品は恋愛と本編をうまく同時進行しているのだ。一点集中と言うわけでなく。だからこそテンポの良い「雰囲気」を存分に味わえる。
先述のとおりこの作品の作画及び音楽には目を見張るものがある。繊細で優美で素朴な作画。この3つを両立するなど生半可ではない。さらにそれが「雰囲気」にマッチしてるのだから言うことなしである。
そして音楽。これは筆舌し難いものがある。端的に言うならば素晴らしい。どんな言葉を用いたとしても最後はこの言葉へと収束する。この作品の世界観と「雰囲気」を絶妙に表現している。特に2クール目のOPは至高だ。この作品のすばらしさを語らずとも表現している。タイトルは「ebb and flow」
直訳すると「引き潮と上げ潮」である。
この作品を語るのにはあまりに言葉が足らない。言葉以上のものをこの作品は伝えてくる。言葉などで語るなど忍びない。
ぜひ「凪のあすから」を自らの体で受けて止めて欲しい。好き嫌いはあるだろう。だが自分は一生忘れられない作品になりそうだ。