「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。(TVアニメ動画)」

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ネタバレ

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★★★★☆ 4.0
物語 : 3.5 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 5.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

月並みな感動物だけれど、ぐさっと共感してしまう部分がある作品

月並みな感動物だけれど、ぐさっと共感してしまう部分がある作品



■月並みな感動物だけれど、ぐさっと共感してしまう部分がある作品

月並み、平凡、ありきたり....。
率直、素直、実直....。

そういう言葉が、物語の中に溢れている作品で、作品全体から優しさや美しさを醸し出しています。
感動物としては、月並みなものの、そういった平凡さが、学生が中心の視聴者層のニーズにぴったり合ったのだと思います。

この作品の大前提として、登場人物が淡い思い出と真剣と向き合わなければいけません。
視聴者も登場人物のように、自分の過去を思い出して、登場人物と一緒に過去と向き合うのです。

しかし、ある程度、厳しい世界を生きている方々には、自分の過去と対比してしまって、この作品の登場人物の気持ちに素直に感情移入できなくて、楽しめないことが多いです。
「人生はそんなに甘いものじゃない」、「こんな思い出を楽しめるのは学生だけだ」と、自分の経験した現実世界と対比してそう思うことが多いです。


では、人生の経験が浅い学生視聴者はどうでしょうか?
学生でも、とんでもなく現実思考の持ち主は、自分の経験や過去と対比してしまい、あまり感情移入できないでしょう。

この作品で、登場人物が向き合う思い出というのは、学生時代のパスカル色のように、淡く溶けてしまいそうな思い出に、よく似ているのです。
なので、非常に学生の共感に生みやすいのです。

例えば、じんたんが幼い頃リーダー気質だったのに、時が経ち成長して、その影すら無くなってしまうのは、変化の象徴の一つして描かれています。
時間の変化をまじまじと視聴者に見せつけることによって、過去との対比を行うのです。
「昔はゆきあつってああだったよね。それと同じように私の友達のあの子もああだったよね」と思もわせるのが目的なんです。

めんまが戻ってきていたのもそうです。
「自分にとって、大切だった存在が過去から戻ってきた....。」と視聴者に思わせることで、過去との対比が出来るのです。

これは、私の感想になりますが、めんまが戻ってきて、歩いて笑って、昔に仲が良かった超平和バスターズのメンバーと仲直りする展開は、自分の心の隙間に釘を刺されるような感覚で、観ていて凄くうるうると泣きそうになりました。

パスカル色にように淡く溶けてしまいそう...人って夢を見ますけど、良い夢ほど思い出せないものですよね...
その夢が帰ってきたような気がして、淡い思い出が戻ってきたような気がして、とってもとっても心が揺さぶれるんです。

あの花には、そういった過去を思い出せるようなシーンが多々あるのです。
そういう思い出を思い出せるシーンが、学生にとってはとんでもなく共感出来るもので、この作品が流行る要因になったのです。


■音楽

このアニメは、音楽で展開を盛り上げているシーンがあるので、音楽面はかなり高評価しています。
あの花の世界観にとても合ったOPとED。
世界観にとてもマッチしていて、尚且つ、後から聴くとアニメの内容を思い出す、良い曲でした。


■ 素直すぎるラスト。

過去の対比を行って、順調に各キャラクターの掘り下げを行い、過去が元のように戻っていきます。
ここまでは言うこと無しなのですが、最終話が問題です。

めんまが戻ってきて、一部の視聴者はまるで自分の過去が戻ってきたような感覚になっているわけですが、誰もが予想できるようにめんまは消えちゃいます。
そこで、もう少しだけ丁寧にゆっくりとめんまがいなくなる前を描いてくれれば良かったのですが、唐突なラストでかなり評価が分かれる結果となってしまいました。

特に最終話は声優にひたすら叫ばせて、視聴者を泣かせようとする展開が、凄く丸分かりで、人によってはあからさまな展開に引く人もいるみたいです。
しかし、自分の過去がまた手の届かないところに、消えてしまう展開には変わりがないので、全く感動できないわけではないですね。

めんまの消えるシーンが、率直、素直、実直、この三個に当てはまるような分かりやすい演出なのです。(音楽を使って強引に感情を高ぶらせる)
なので、そういうあからさまに泣かせようとしている展開が嫌いな方には合いません。

分かりやすい展開じゃないと感動できない方におすすめします。
というか、この作品は、分かりやすさが視聴者のニーズに合っていたので、流行ったのですから、演出については、これで良い気がします。

ただ、もう一話だけ、キャラクターについての掘り下げがあった方が良かった気がします。
キャラクターの心理的な悩みが、強引な展開によって、一気に解決されていますが、それがとても分かりにくいので、心理的な悩みの解決を描くシーンが欲しかったですね。


■ 『凪のあすから』がどうして子供の頃から描かれるようになったか、分かる作品

あの花と凪のあすからの脚本は岡田麿里さんですが、両作品はかなり似ている部分が多いです。
しかし、あの花でのあった問題点は『凪のあすから』でしっかり解消されています。

あの花の欠点として、過去で何があったのか分かりにくいので、共感しにくいと声が少なからずありました。
実際に、自分の思い出に共感出来る部分が無ければ、あの花に強く感情移入出来ないかもしれません。

『凪のあすから』では、前半に子供の頃に何があったのかをしっかりと描いてくれています。
あの花よりも長くて前半はちょっとだけ冗長ですが、あの花で言われていた欠点はいくつか解消されています。
またキャラクター描写不足だったところを徹底的に掘り下げています。

凪のあすからは、この作品無しには生まれなかったのでしょうね、って感じた作品でした。


■ 過去と向き合った結果(感想)

じんたんは、めんまが消えた時に、とんでもないショックを受けたでしょう。
花火のシーンでは、登場人物がめんまのことを消えないで欲しいと思いながらも、過去と決別しないといけない、と決心を固めて、じんたんはめんまを成仏させようと努力します。
本当はとても辛いんだけど、過去に決別しなきゃいけないと思って....必死に....必死に....自分の気持ちを隠そうとします。

でも....人間の心が動くのは単なる利益やそうしなければならないというルールだけではないんですよね。


花火が上がっても、めんまは消えませんでした。



この時、じんたんは呆気にとられます。


............めんまはまだ消えていない。








本当はめんまを成仏させたくなかったくせに、何を言っちゃってるんだか....。





成仏せずに、ここで永遠にうろうろしていてはだめ。
だから、成仏させなければならない。

そんな綺麗事を並べても、心の中では、自分の過去を失いたくないと強く願っているんです。



あの夏の淡くて溶けちゃいそうな.....まるでキャンパスにパスカル色の絵の具を塗りたくったようなとても綺麗な思い出。


忘れたくないんですよね。
決別したくないんですよね。

思い出をいつまでも離したくない。


いくら表情に隠したり、我慢しても、本当は絶対に離したくない。




絶対に離したくない!




本当は感情を抑えられないほど......離したくないんですよね....。









離してしまったら、また最初に戻ってしまうから......。



離してしまったら、何かも終わりそうな気がするから......。








だから、本当は離したくないんですよ.....。








でも、離さないと過去とは決別できない.....。










花火を打ち上げ終わった後に、じんたんはめんまが消えないで済んだと安堵します。
せっかく、みんな仲直りして、笑って過ごせているのに、めんまがいなくなったら、何かも終わってしまいそうな気がするから....。






けれど、現実はそんなに甘くありませんでした。
めんまの体の調子は悪くなり....じんたんも別れを決意せざるおえない状況になります。


みんなぐだぐだ言いながら、めんまの手紙を読んで、涙がぽろぽろと溢れます。
自分たちが、めんまが死んだことにより、引きずっていた過去が、その手紙を読むことで、浄化されていくような感覚になって、涙がぽろぽろ溢れ出します。

ずっと離したくないと思っていた過去。
淡い....淡い....まるでキャンパスにパスカル色の絵の具を塗りたくったようなとても綺麗な思い出。


消えちゃいやだよ....。


消えちゃやだ!



.........そう、思ってた。


めんまが消えた時も、
めんまがかくれんぼだよ、っと行った時も、


じんたんは必死にめんまの名前を呼び続けます。




母親を失った幼い子供のように叫び続けます。






感情を込めて叫び続けます。






まるで、自分の過去に向かって話しかけるように、じんたんは叫び続けます。






傍から見れば馬鹿みたいに見えるかもしれません。





もうちょっと冷静になれ、と言いたくなるかもしれません。




けれど、じんたんはそんなことを言われても、叫び続けたでしょう。







なぜ?













じんたんが見ていたのは、好きだっためんまだけではなく、あの時のあの夏のみんなで作った思い出なのですから.....。










めんまの手紙を読んだことによって、自分自身の中にたまっていた過去への不満が、無くなっていきます。
めんまの手紙で、気が狂うほど泣いて、過去との決別をはたします。
消えるときは唐突だったけれど、めんまが戻ってきて、みんなは確実に成長しました。




確実に前より大人になりました。




別れの時はとても辛かったでしょう。




過去と決別するのは、辛く辛くて堪らなかったでしょう。



受け入れられないと思うほど辛いものだったでしょう。



でも、めんまがみんなに出した手紙は....











みんなが悩んでいたことを解決させるような大きなパワーを持っていました。










「本当はこう思っていたんだよ?」







そういうめんまの本当の気持ちが書かれた手紙。





それはまだ幼い彼らにとっては、すっごく嬉しくて感動的なものだったでしょう。



そして、同時に、みんなが悩んでいたことが解決します。



みんなは過去のことをふたたび考え直します。








確かに過去はとても素晴らしいもので、戻ってきて欲しいと思うこともあるけど.....





最後は悲劇的な事件で幕を閉じたけれど........




でも、過去はとても素晴らしかった、めんまが成仏した事実はかわりないよね....。




めんまはみんなことをすっごく好いていたし





凹んでいたって仕方ないよね。





過去に後悔することはあるけど、





過去はとても素晴らしいものだった。




だから




いつまでも過去を見ていたって仕方ないよ。





だって....





めんまは過去を受け入れて成仏したじゃない....。






ちゃんと前向いて今を歩んでいこう。







めんまのためにも。






じんたん....いえ、みんなは過去を受容をして前に進むことを決意します。







secret base ~君がくれたもの~(あの花、ED)





君(めんま)がくれたもの



secret base ~君がくれたもの~の歌詞にもあるように



めんまのくれたものは、最高の思い出なんですよね。



だから、じんたん達は過去を受け入れることが出来ました。








過去と向き合った結果というのは




めんまが最高の思い出をくれたから...というのもありますが



過去を受容することが出来たし、じんたんたちは少しだけ成長しました。







あの花の作品の内では悪いものではありませんでした。




過去を向き合うことは決して悪いことではない...。


そして過去を受容して受け入れることは、とっても素晴らしいんだよ




そんなことを感じられる作品でした









じんたんたちは、こうして大人になっていくのでしょうね。






とっても綺麗な思い出を背負いながら。





社会の中で揉まれていく。





人生の本番はこれからです。





歩む。歩む。ただひたすらあてもなく歩む....。





それでも、超平和バスターズのことを忘れない。





だって。




仲間たちのことを忘れたくないから。






みんな、あの夏のことを思い出しながら、成長していきます。









10年後の8月 また出会えるのを信じて。(by secret base ~君がくれたもの~)

投稿 : 2014/07/15
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