renton000 さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
子供の夏の定番に!もちろんおとなも!
あらすじは他の方のレビュー等をご参照ください。
登場人物(家族):
子供は子供らしく、親は親らしく、そして信頼関係が根底にあるような家族観ですね。サザエさんやクレヨンしんちゃんを思わせるような明瞭な人物像が描かれているので、どの世代でも特に違和感なく視聴できるでしょう。河童のクゥは、ピュアな存在として描かれています。
メインテーマ:
河童と人間、それぞれの社会性と相互の共存についてを中心に描いているのだと思います。自然と人間という対比の代理的なものでしょう。もちろん人間のエゴイズムに関してもかなりの時間を割いています。
同時に、失ってはならない普遍的な価値観についても言及されます。
終盤とエンディングにおいて、クゥの口からきちんとこれらに関する説明がなされるので子供にも伝わりやすいと思われます。
評価点:
死を子供にも分かりやすく描いているところは素晴らしかったです。殺し殺されるということ、死ぬということ、そして自殺。特に後者の二つは、誰かのためになる死と、逃避としての死で表現されていました。また、自殺から救うには本人の意志だけでなく、小さくとも外部からのきっかけが必要であると描いてあったように思えます。
重たいテーマを説教臭くなく伝えている手腕には惚れ惚れします。
惜しかった点:
①社会性の裏返しとして孤立についての描写も結構あります。
数は揃っているのですが、対比構造において若干物足りなく感じた部分もありました。
{netabare}
まず、クゥ。物語の冒頭で父を亡くし、仲間の河童もいません。つまり、河童としても孤独になるわけです。当然、人間社会においても孤独です。(主人公家族を間に立たせて人間との共存を試みるのですが・・・。ここが作品の主題ですね。)
次に、菊池さん。家族の中でも、友人関係でも孤立をしています。
そして、二人(?)のおっさん。一方は、共存の後、孤立し、共存。他方は孤立に見せかけて、独自の解決策を持っています。
最後に、主人公こういち。友人関係において、共存の後、孤立。
最も似ているのは、共存を模索し続けるクゥと菊池さんです。結論に至るまでの両者の対比だけは強く表現して欲しかったです。いじめ問題としてみれば、菊池さんの共存への道が子供にとってはより重要で分かりやすいかもしれないので。結論部分に文句はないのですけどね。
菊池さんとこういちの対比については、ケンカのシーンに表れています。模索し続けた菊池さんが先に解決策を提示し、それにこういちが乗っかるという流れですね。こういちがんばれよと言いたくなるところですが、構造としては自然な流れでした。
そのほかの対比についても言いたいことはあるのですが、蛇足に近いので省略します。
②自然と共存できている人々の描写が欲しかった。
エンディングでクゥ(と二人目のおっさん)から人間社会へアプローチする姿があるのですが、人間からも歩み寄れる姿勢が欲しかったです(家族以外で)。遠野あたりで表現できたように思うのですが、描かれていたのは理解の無い人間の姿ばかりでした(観光客や1千万)。十分察することはできるのですが、子供向けとしてはあってもよかったのではないでしょうか。
③終盤の流れも少しだけ違和感がありました。
ケンカ、クゥとの別れ、クゥその後、と流れるのですが、クゥと別れたあとのこういちのエピソードが欲しくなってしまうんですよね。菊池さんとクゥを事前に引き合わせたうえで、クゥとの別れ、クゥその後、ケンカ(こういちの成長)、クゥラストカットの方がよかったような・・・。時間的にきついかな(笑)。
{/netabare}
まぁ、若干の願望が入っているかもしれませんし、子供はあまり気にしないかもしれません。
まとめ:
テーマは社会風刺を含み多岐に渡ります。子供には早い段階から繰り返し見せる価値のあるものです。大人も初心に帰って楽しんでみてはいかがでしょうか。考察に値する作品です。