しーこ さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
雨アメ、降れフレ
雨の日が愛おしくなる。
もう一度ちゃんと歩けるように。
少しいびつな、二人きりの再生の物語。
とにかく、雨の物語だけあって、雨の描写が美しい。
作画が綺麗だと、【よく本物と区別がつかなくてリアリティがある】って感じてしまいがちだけど、
あまりに美し過ぎて、逆にファンタジックなおとぎ話のような描写にすら感じた。
雨に囲われた新宿御苑のベンチは、まるで二人きりの空間。
雨の音・鳥の声・鉛筆のすべる音。
雨だれのようなピアノのBGMと、キラキラした光や、カメラワーク、すべてがとってもドラマチックで美しい。
主人公は15才の少年・タカオなのだけれど、
どうしたって、27才の謎めいた女性・ユキノに感情移入してしまう。
『言の葉の庭』というだけあって、
セリフがとても印象的だった。
レンタルして見たのだけれど、二回見て、二回目はメモを取りながら見た。
以下、ネタバレ感想。
{netabare}タカオの印象的なセリフ
●「でも、こんなことしてる場合じゃないって、思う」(晴れの日、学校に行くことに対して)
●「まるで、世界の秘密そのものみたいに、彼女は見える」
●「靴を作ることだけが、俺を違う場所に連れて行ってくれるはずだということを」
●「だから、何よりも俺は、あの人がたくさん歩きたくなる靴を作ろうと、そう決めた」
早く大人になりたいという焦り。謎めいた大人な彼女に惹かれていく、そして彼女を何かから救いたいという気持ち。
ユキノの印象的なセリフ
●「ねぇ、私まだ大丈夫なのかな…」
●「あれ以来、私、嘘ばっかりだ…」
●「私ね、うまく歩けなくなっちゃったの。いつのまにか」
●「27才の私は、15才の私より少しも賢くない。私ばかりずっと、同じ場所にいる」
●「私はね、あの場所で一人で歩けるようになる練習をしてたの。靴がなくても」
●「あの場所で私、あなたに救われてたの」
ユキノの描写がすごく苦しく描がれていたので、庭の中でのタカオの無垢さ、真っ直ぐさが眩しくて、私自身も癒やされる気がした。
ただ、『普通』にそこにいてくれて、私をなんとなく待ってくれる存在。
ただそこにある少しの背徳感が、なんとも絶妙で歪な距離感を作っている。
タカオが足に触れる(測る)描写が、息が詰まるようで、とても好き。
一番印象に残ったシーンは、
ユキノの部屋で二人が、
「今まで生きてきて、今が…」
「今が一番…」
『幸せかもしれない』
と、二人の声が重なるシーン。
15年生きてきた『幸せ』と、倍近く27年生きてきた『幸せ』の重みの差。
同じことを考えても、余計遠く感じる距離にとても切なくなった。{/netabare}
秒速もそうだったけれど、
とても切なくて苦しくて、泣きながら見るんだけど、
見終わったあとココロが癒されて、晴れ渡ってる。そんな不思議な感覚になる。
新海監督って本当すごい人だなと改めて思いました。