退会済のユーザー さんの感想・評価
3.6
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 3.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
友達になって下さい!
人間の心情を丁寧に描いた作品である。
もどかしさを前面に出したラブストーリーであり、1週間で記憶がリセットされるヒロインの藤宮は時の檻に囚われているかのようである。
序盤は「変化のない焦り」を主題にしたタイムリープもののような雰囲気を感じた。
そのような意味で変化と不変のバランスが上手く描かれていたと思う。
障害が純粋さとイコールであるとまでは思わないが、記憶と人間関係に注力した物語は人間の脆さや強さを描き、二心のない藤宮香織というヒロイン像を作り上げた。
視聴者は記憶の欠如という藤宮の弱点を知っているので、彼女が他人に厳しく当たっても、嫌いにはならなかっただろう。
それは欠点を純粋さという魅力に変換したかのようである。
特筆すべきは失恋にならない恋愛作品ということである。
タイトル通り、建前上は友達関係でストーリーは展開するので、お互いに恋人関係を望んでいるように見えても、実際にはそうならない。
そのため、複雑な状況になっても、安心感がある。
また、クールに振舞う桐生は緩衝材のような役割であり、長谷と藤宮の関係を上手く繋ぎ止める配役で丁寧に描かれている。
派手に恋愛ドラマを描かず、嬉しいという気持ちを重視してしっかりと描くのは難しかったと思うが、淡々とした中に波風を起こす演出で恋の描写に重みを与えているのが素晴しい。
また、柔らかい絵柄の影響か、穏やかな雰囲気がある。
そのため、多少急転しても辛くはならない。
ドラマチックな展開はあまりないが、長谷と藤宮の初々しい関係が新鮮味を与えてくれる。
人によってはじれったいと感じるかもしれない。
しかし、少しずつ進展していく長谷と藤宮の仲を暖かく見守ることができれば、基本的に楽しめると思う。