「コードギアス 亡国のアキト 第1章「翼竜は舞い降りた」(アニメ映画)」

総合得点
70.1
感想・評価
810
棚に入れた
4905
ランキング
1647
★★★★☆ 3.7 (810)
物語
3.6
作画
4.0
声優
3.7
音楽
3.6
キャラ
3.6

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ネタバレ

退会済のユーザー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 3.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

レイラが妙にエロい

本作は4部作の第1作目であり、一斉を風靡したコードギアスシリーズの外伝の導入部分である。
主人公の日向アキトに何故ギアスがかかっているのかを始めとして肝心なことは明らかになっておらず、第2章以降の展開に委ねられている。
とはいえ、続きが観たいと思わせる内容になっており、イントロとしては上手くできていると感じた。
この映画ではTVシリーズでほとんど描かれることのなかったヨーロッパを舞台にしている。
E.U.(「ユーロピア共和国連合」、もっとも「ユーロピア連合共和国」という表記もある。なお、TVシリーズでは「ユーロ・ユニバース」という表記)は、コードギアスの世界において、神聖ブリタニア帝国、中華連邦と並ぶ三極の一つだったにもかかわらず、まともに登場することがなく残念に思っていたので、今回はメインで取り上げられることになったのは素直に嬉しい。
主人公のアキト及び他の「wZERO」のメンバーは欧州生まれで祖国の日本を知らないのに亡国の民になってしまった者である。
彼の上官レイラ・マルカルは元はブリタニアの亡命貴族の娘という設定。
アキト達はいわば本当の居場所を持っていない者達であり、そんな彼らが理不尽な世界に立ち向かっていくというストーリーは秀逸だと思う。
E.U.は民主主義の国である。
昔のフィクションなら悪逆な専制国家に立ち向かう正義の勢力として描かれそうな国家だが、本作では理想とかけ離れた悲惨な姿が示される(既にロシア全域をブリタニアに奪われている)。
TVシリーズにおいて、ブリタニア皇帝から「人気取りの衆愚政治に堕している」と評されていたE.U.だが、劇中ではどうしようもないほど腐っていることが分かる。
特に、酷いのはE.U.政府がブリタニアの侵略で祖国を失った日本人をゲットーに閉じ込め、本人や家族にE.U.の市民権を与えることを出汁に日本人の少年少女を捨て石部隊として過酷な戦場に送り込んでいること(ブリタニア人が用いる蔑称「イレブン」を平気で使っている)。
民主主義の大前提である基本的人権の尊重をものの見事に放棄している(念のために言っておくと、基本的人権は人間である以上、当然に有しているものであり、国籍の有無に左右されるものではない)。
民主主義の理想も理念も誇りも矜持も全て失っているE.U.が末期状態にあることがよく分かる描写である。
個人的にはE.U.は理念上ブリタニアに対抗するため、やせ我慢でも難民を厚遇し、そのために苦労しているという設定でもよかったと思うが。
劇中ではE.U.のスマイラス将軍がナポレオンを処刑したことは本当に正しかったのかということを述べていた。
本作の監督もE.U.に関して「ナポレオンのような優秀な人間を排除してしまう体制」であると語っていた記憶があるが、この問題についてはいかなる要素を重視するかで解答が異なるだろう。
現に、ナポレオンが皇帝になった現実の世界においては、彼の野望が全ヨーロッパを戦火に叩き込み、数多くの人命が失われたのだから。
それに、立憲主義や法の支配という観点から見れば、天才の力を抑え込んでしまうデメリットよりも、凡人に過度の権力を与えないメリットが優るとも言える。
E.U.が独裁者になろうとしたナポレオンを処刑し、結果として300年間独裁政治の弊害を取り除けたのであれば、それ自体は悪いこととは言えないだろう。
本作はヨーロッパが舞台になっているとはいえ、メインキャラクターは亡国の日本人であるアキトや、亡命ブリタニア貴族の娘のレイラ等のアウトサイダーが多く、生粋のE.U.の人間は脇役に留まっている。
この方針が悪いわけではないが、今後の展開としてはE.U.人の重要なキャラクターを登場させた方が良いのではないかと思う。
滅亡寸前の国であっても一人くらいは「この人あり」と謳われる人物がいるものだ。
政治家や軍人の中にあくまで民主主義の理想を護るため奮闘するキャラクターがいても良いと思う。
確か、TVシリーズではE.U.にはブリタニア軍を圧倒する名将がいるという設定があった。
物語を盛り上げるためにもこの設定を活かすべきではないかと考える。
さて、『亡国のアキト』の今後の展開に期待すると言いたいところだか、正直、懸念材料も少なくない。
本作はあくまで「外伝」である。
外伝は本伝を前提として存在するものだ。
つまり、本作が「コードギアス外伝」である以上、TVシリーズで展開された物語や結末から大幅に逸脱することはできないことになる。
TVシリーズにおいて、E.U.はシュナイゼルによって領土の半分を奪われ(首都パリのあったフランス州も降伏)、次に残った構成州の多くが超合集国に加盟するため脱退(残ったのはドイツ州、イギリス州等の10州程度)、そして、最終的にルルーシュに降伏し、ほとんどいいところなしで終わってしまった。
アキト達がどんな運命を辿ったのかは分からないが、この展開で活躍できる余地があるのかとも思えてくる。
特に、まずいのは本伝を前提とする限り最終的には全てがあの馬鹿馬鹿しいゼロレクイエムに流れ込んでしまうということである。
ルルーシュ一人を持ち上げるために他の全キャラクターを道化にしてしまったあの茶番劇の犠牲者にアキトやレイラを加えることが不可避とすれば、先は明るくないだろう。
スタッフはTVシリーズの拘束から逃れる方法を真剣に検討してみるべきだと考える。
その唯一の方法は『コードギアス』の世界観や基礎設定のみを活かし、新しく物語を展開させていくことであり、言うなれば必要に応じて本伝部分を改めて作り直すことだと思う。
例えば、富士山の決戦の後、E.U.はルルーシュに屈服せず、黒の騎士団の残党やオーストラリア等の中立諸国と結んで反ルルーシュ戦線の一角を占める。
アキトやレイラは星刻や藤堂、扇達と共にルルーシュに立ち向かい、彼の計画を破綻させていく。
そして、最終的には人々は棚ぼたではなく、自らの手で平和な世界を勝ち取る。
このような展開にすれば、少なくともアキト達をルルーシュの引き立て役にせずに済む。
取り敢えず、今後の展開に期待大の作品である。

投稿 : 2014/08/19
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