退会済のユーザー さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
ぱないの!
『化物語』から振り返ってみると、主人公アララギが女の子達に好意を持たれていく流れである。
これは単純なハーレムアニメの構造だったと思う。
しかし、よくあるハーレムアニメのような女の子が一気に揃ったり、既出の女の子をろくに描かないで次々と新しい女の子を出すことはしなかった。
一人ひとりの話を丁寧に描き、満足させる。
アララギの行動、なでこスネイクの後味の悪さや撫子のあざといまでの可愛さ等の視聴者が作品の悪い点として捉えかねない部分、例え無意識でも漠然と抱えるジレンマがあると思う。
満足させて話を重ねて後、それらを浮上させて本題に絡ませる手法は素晴らしい。
表面上は刹那的な会話を繰り返し、薄っぺらいとも思われる本作のキャラクター達だが、見続けていくにつれて、深さ(他面)を見せる。
時間をかけて様々なキャラ達の個性が描かれていき、今まで絡まなかったキャラ同士が絡むというだけでどのような化学反応を起こすのだろうと考えてワクワクできる。
原作者の西尾維新は面白くなるのならキャラの性格を変えてしまってもいいとさえ思っていると述べていた記憶があるが、変わるまでの過程を飛ばしても別人に入れ替わったようには感じさせないのは流石である。
過程を後付けであっても加え、あの時の会話やシーンに「そんな意味を持たせたか」と感心させられる事が多かった。
無駄とすら思われる会話の連続はシリアスでスリリングな物語に引き込む役割があったと考える。
先程まで笑っていたのに、いつの間にか物語に没頭させられていたということが何度もあった。
ちなみに、羽川が関わる会話は基本的に面白くない。
面白くないというよりは笑えはしない。
人間模様を豊かにするためにバリエーションのひとつとして意図的に笑えなくしていると考える。
『傾物語』はスケールの大きい絶望感が凄い。
これまでは小規模での話であったのに、急に規模が大きくなり驚いた。
一人の女の子を救ったことで世界が滅び、一人の女の子の死(作中の表現としては救う)で世界が救われる。
しかし、その世界のアララギは死んだままというのは青臭い正義と過剰な自己犠牲精神で行動するアララギに対する最大の皮肉であり、今後を示唆するものであったと考えることができる。
『猫物語(白)』では「ヒーローは遅れてやってくる」というヒーロー像で安心感を与えてくれるアララギだが、『恋物語』では自分勝手な正義が恋人である戦場ヶ原を悩ませて貝木の懸念材料となる。
「遅れてやってきたヒーロー」は貝木目線で観る視聴者にとっては無知な未熟者にさえ映る。
この『物語シリーズセカンドシーズン』では最初と最後でアララギの描き方をガラリと変えて見せてきた。
これは次作以降も、非常に楽しみになってくる。
既に忍野メメが指摘していた事であり、『偽物語』でも「正義」が語られているが、さらにエグくなっていくのではと感じさせられる。
『囮物語』は予想外の展開であった。
私は素直にその後があると思わず、話の持っていき方やオチで妄想だったかのような印象を持ってしまった。
そのまま投げっぱなしで終わったのだが、話自体が面白かったこともあり、西尾維新の凝ったお遊びと解釈しつつ満足。
その後、撫子の扱い方について気になっていたのだが、『鬼物語』であのように描かれるとは思わなかった。
しかし、捉え方は違えど『囮物語』から得た「撫子の妄想(現実逃避)」というキーワードは『鬼物語』を観ると重要だったのだと改めて思わされる。
また、『鬼物語』の「くらやみ」の恐怖感は素晴らしかった。
畳み掛けるような声優の好演による状況説明やカメラアングルは秀逸であったと思う。
全体的に過去作の積み重ねがあったからこそ、今作を楽しめたと感じた。