退会済のユーザー さんの感想・評価
4.7
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
演出の組立による化学反応
本作は卓球を通した青春アニメですが、本作をたまたま見返して改めてすごい作品だなぁと、痛感。これが絵とか音とか、演出面がスバラスィ。絵は水彩画で描いたような明るい色を基本とした色彩で、なんだか上手いのか下手なのか微妙な塩梅で描かれてございます。これがさらに平面的に描かれていて、その絵世界が映像においての匠さを色々と、取り入れている。
映像効果として被写界深度の中にモンタージュ理論があります。モンタージュとは組み立てるという意味。映像aと映像bを繋いだときにそれぞれの意味a、bとは別の新しい意味cが発生する、連続映像の化学反応みたいな感じです。
ピンポンの世界は基本、全く同じ画を使い回していることがある。その絵を一定時間流しているのだが、動いているのは口だけだったり、手持ちぶさたで、ラケットをいじくったりしている。これはスマイルのだるさを表す為の、一描写だったりするが、随所にそんな所が見受けられる。例えばよくある恋愛ものでの、踏切や電車が通ったりするのも広義的には範疇らしい。大きなピントで体育館を練習風景を映している時は、ひどくロボット的な、動かされているような印象をモブキャラで描写し、クローズアップさせるべき人物(ペコ、スマイル等)に関しては、命の吹き込まれたように映る。これはロボット的描写aの積み重ねであったり、あるいはbがあったり、した上で、cスマペコが生きているのだろう。
そこで、cの生きた描写を更に魅力的にさせる効果として、基本平面画からのカメラワークであったり、スマイルのカットにおけるコマ割り描写等、把握しきれないほどに、化学変化を起こしてくる。
スマイルのカットの描写は、野球で投球フォームの連続写真のように、体全体から、足だけを映して、足の踏み込む移置であったりと、細部まで何かしらを意図している事が伺える。足だけのカットにおいては、体育館でのキュッと止まる音と映像が相まってシナジー効果が生まれている。
また描写のスピードにおける緩急の使い方では、基本早い動き&一連の同じ絵の中、いきなりインパクトを与えたい絵にしてくる節があったり、スローモーションになったり、それがピンポン玉だったり、キャラだったり、ラバー面(ラケット)だったり、とスピード&絵の緩急をつけてくる。そんな中、例えば凄い回転がかかった球を打ち返すが、上に跳ねた場合、玉ではなく、鳥に見えるという心象風景もあったり、背景を真っ白にすることで、向き合っている彼らだけの世界になっている風で、あったり幾つもの、映像cやdが生まれているのか、なんて感じがします。
また音に関しても、ピンポン玉の気持ちいい程の音であったり、特に感じたのはチャイナという中国のキャラ。彼は母国語そのまんまなんだけど、なんか、それが味があっていいんですよね。一応字幕が出ているんですが、必要ないと思えるくらいに、マッチしているというか、それ以上。映像で彼の心境が伝わってくる感じ。むしろ言葉で取り繕ろうよりも、その純な熱情それだけで充分。これも演出の不思議さなのだろうか。
理論については、広義な所もあり、どこからどこと分からない部分が多々ですが、単純に当たり前過ぎて、見る側もそれを意識することもないんだけど、案外意識して観ると当たり前とは思えない、映像と音による化学反応が起こっていると、そんな感じでござるでございますw