STONE さんの感想・評価
4.8
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
オリジナルの強み
実は、当初は「魔法少女」ということで視聴を躊躇していたが、
とにかく視聴して良かったというのが偽らざる感想。
オリジナルである強みを最大に発揮した作品。
原作がないということは、制作側以外は誰も先の展開を知ることが
できず、謎の多い展開、かつ勢いのある演出に最後まで引っ張られた。
先の読めない展開に加えて、ストーリーの中で視聴者に突きつける
テーマは宗教や哲学にまで踏み込んだ要素があるため、とにかく考察
する要素が強かった。いわゆる「語るアニメ」というやつ。
勢いがあったことは確かだが、勢いだけでなくプロットやシリーズ
構成が緻密かつ巧妙に作られている。
よく謎、意味深な描写、伏線などを振りまくだけ振りまいておいて、
終わってみると「結局、何だったの?」と思うような作品が多いが、
本作に関してはそういった部分をうまく回収しており、あれだけ中身の
濃い内容をよく12回にまとめ上げられたなと思う。
12回という短いシリーズを逆手に取ったのか、全ての回に意味が
あり、いわゆるだれるような回がない。
まあ、キャラクターが魅力的であるがゆえに遊びやスピンオフのような
回があっても、それはそれで楽しかったかもしれないけど。
伏線の張り方も見事で、いかにもな伏線以外にも、日常の些細な会話や
描写が後になると「こういうことだったのね」と思うようなものが多い。
はっきり言ってタイトルや主題歌ですら、一種の伏線と言えるような
もので、いかにも王道魔法モノのようなそれはストーリー展開に
インパクトを与えるためのフェイクとも言える仕掛けかと思っていたが、
終盤に至って更に意味があることに気付きびっくりした。
この辺は二度三度見ると、色々な仕掛けが判り、それだけでもかなり
楽しめる。
最終的な決着の付け方に関しては、個人的には「あの辺が妥当な
落としどころかな」という印象で満足。
人によっては賛否両論あるでしょうが、どんな終わり方をしたとしても
否定的意見は出てくるでしょう。
結局のところ、この作品は「希望と絶望」をテーマにした作品で、更に
「戦い続けることの意味」も問うような作品となっている。
この手の作品は難解なまま「判る人だけ判る」的なまま突っ走って
しまうことも多いが、この作品に関してはかなり視聴者に対して親切な
作りになっている。
序盤でじっくりと登場人物や世界観を描くことで充分な下地を作って
おき、その上で怒濤のストーリー展開を見せるため、いわゆる視聴者
置いてきぼりにならないような配慮を見せている。
また、登場人物の関係に関しては意外とシンプルで、はっきり言って
ストーリー上の主要人物は6人だけ。
このため内容の把握がしやすく、エンターテイメントとしてもよく
出来ている。
少ないだけに各キャラもよく出来ており、各々が主人公と言えるような部分が強い。
主人公であるまどかに関しては、他のキャラに較べて、個性が弱く、
回りのキャラに振り回されている印象だったが、これに関しても伏線の
一種のようなもので、まどかのキャラとしての弱さが終盤で意味を
持ってくる。
作画、音楽なども良く、日常の背景もていねいだし、魔女の結界の
シュールな描写などは一見の価値あり。
バトルシーンも相当力が入っており、この作品が単純明快な勧善懲悪
モノだったとしても、こういった部分でそれなりの評価を得ただろうと
思われる。