plm さんの感想・評価
4.6
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
風がさわがしいな
ノイタミナ枠にて放送された青春卓球アニメ。
過去に同原作で10年以上前に映画化されているが、自分は知らなかった。
特徴的な絵柄で描かれているので、イロモノ見たさな気持ちで興味を持った。
だが、観始めてみればものの数十分、1話でがっちり心掴まれる!
これは、今期どころか数年に一度の傑作なのでは?というレベルで見入る。
コミカルな絵柄から感じた印象に反して、真剣で鋭い内容に度肝を抜かれたのだった。
■新しい風を感じる
それほどまでに引き込まれるのはなぜか?
それは、今まで感じたことのない"新規性"にあるのではないかと思った。
特徴的なのは絵柄に限ったことでなく、特徴的な作風、特徴的なアニメーション、
この作品独自の"味(オリジナリティ)"を存分に引き出そうとしているのが伝わってくる。
ともかく、台詞回しがいちいちカッコイイ。
この作風に奥行きを感じられるのは、この作品が持つリアリティによるものだと思う。
漫画作品の登場人物は、キャラ付けの尖らせ(デフォルメ)を重視しているものが多いが、
この作品はどちらかといえば、場面場面で人物が考えていることが瞬間毎に描かれているかのように、
自然体の人物描写が活き活きとして感じられた。
そこに現実感(本当に目の前で起きているかのような臨場感)を得られたのではないか。
チャイナが単なる中国人ってキャラの設定に収まらず、気迫を持った中国語で喋り、
登場人物の一人としての立場があり、息づかいを感じられる。
そういったリアリティに裏打ちされた独創性だからこそ、一気に引き込まれたのだと思う。
■紐解かれていくキャラクターの立ち位置
最初に観始めた時は、誰が主役なのか、何を軸とした話なのかがすぐには掴めない。
そこで、キャラの立ち位置を探っていく初めのうちは、予想がつかず先が読めなかった。
これが面白く、特に1~3話あたりはそれが少しずつ紐解かれていくことにとてもわくわくした。
ペコとスマイル、二人のどこを注目するかにミスリードが置かれながら、関係性や実情が明かされてゆく。
この流れに"物語の動きだし"を感じて、一体どうなってしまうんだろうというドキドキに満ちていた。
センス抜群の導入だった。
■中盤あたりから感じるギャップ
そんなこんなでがっちり掴まれたはずの序盤だったのだが、
インターハイ予選あたりからどうもそれまでのようにのめり込めない部分もでてきてしまった。
もともと心理描写がわかりやすいタイプの作品ではないのであろう(察する必要がある)ことで、
インターハイ予選後からの、スマイルの心変わりっぷりはどうしてだろう?と引っかかりを持ったり、
後にわかるものの、スマイルが何を目指しているのか?話の軸はどこにあるのか?が分からなくなった。
また、ドラゴン戦自体が過剰演出で、卓球のスピード感も強敵としての迫力も感じられず、
なんだか漫画チックになりすぎているように思った。
それから終盤にかけての展開は、サブキャラクターの人間ドラマ的な面が強くなり、
本筋のペコとスマイルの話の終点は見通せてしまっている(=大会の結果も大方予想がつく)ために、
物語としての面白みを失っているように思えた。
スポ根的王道……といえば聞こえはいいが、最後くどいしちょっと都合が良すぎるよね、という感じ。
映像的には、終盤の試合は躍動感があって非常に良かったのだけど、
展開や間(溜めたわりに唐突に覚醒したように見えた)によって、少し冷めてしまった。
■才能と努力の話
スポーツモノでは必ず付きまとうといっても過言でではないのが才能と努力の話であるが、
今作では結局のところどういった描かれ方をしているのだろう。
曲解しているような気もするけれど、
「才能のあるものだけが飛ぶことができて、高みに立った世界を他者に見せることができる」
ということなのだろうか。
個人的にアクマがやめてしまった理由はさっぱりわからなかった。
その場の激情に駆られて、投げ出してしまうということがあるのはわかる。
けれど自分の限界に見切りをつけて、悟った風になるのはなんだかなぁと思う。
努力や才能などといっても、自分が他人より努力していると思っていたけれど、
その他人は(表面的に見えないだけで)それ以上の努力を積み重ねていただけ、ということもある。
才能という言葉で片付けて、それはおろか自分で成し遂げられなかったことを他人に背負わすことで、
自分の役目を全うしたかのような気になるのは、愚かしいように思えてしまう。
ペコが心機一転するシーンであるのだろうけど、どうもすんなり入ってこない考え方だった。
なんというか
「俺は頑張るから、お前も頑張れ」はいいけど、
「俺は諦めるけど、お前は頑張れ」は何だか腑に落ちないのだった。
☆まとめ
めちゃくちゃ引き込まれて、近年稀に見るほど見入った作品だったのは確か!
中盤以降純粋に楽しめない部分があったものの、きっと自分の感覚が少々捻くれているせいなので、
文句なしで楽しめる人も大勢いると思う。それほどに鋭い作品として仕上がってると思う。
何だかんだ言っても今期ベストはこれかなーと思っているのだし。お勧めダヨー。