ぐりこもなか さんの感想・評価
4.8
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
スポーツは残酷だが、楽しい
放映開始前から監督のレベルの高さとと原作の完成度の高さを聞いていたためかなりハードルを高めにして見始めたが、そのハードルでも低すぎたようだった。
素晴らしかった。自分の中では今年暫定No1だ。毎回が神回、特に後半は毎回涙ぐんでしまったレベル。キャラクター、音楽、演出、声優、作画、脚本、全てが高次元でマッチすることでとんでもない作品が完成する。それは試合のシーンになるととんでもない熱さと快感を産むし、人物の心情を描くシーンになるとそれがまさに自分のことのように共感し、感情が揺さぶられる。普段あまり感情移入はしないタイプだが、この作品には一人どころか、登場人物全てに感情移入してしまうほどだった。すごすぎる。
ストーリーそのものは、5人+1人(江上くん)のメインキャラが卓球を中心に苦悩し、最後にヒーローという名の才能の化身に救われるという極めて単純なものであった。
卓球=スポーツは本来誰にとっても楽しいものである。それなのに時が立つにつれて周りの期待やプレッシャー、競争原理における才能の限界、そして自らの自惚れによってどんどん本来の楽しさが失われていってしまう。才能のないものはあるものを妬み、才能のあるものもそれを自らを縛り付ける枷と感じ始める。その苦悩のどん詰まりの中で救える人間がいるとしたらそれはやっぱりヒーローなのである。根源的なスポーツの楽しさを忘れずに上を目指し続ける人間。まさに求める人間に才能が与えられた例だろう。そして悩めるものたちに忘れていたことを同じスポーツを通して思い出させる。この過程に感動してしまう。
ストーリー上で上手いと感じたのは、ヒーロー自身も物語の後半まで自分がヒーローであったということを忘れていて、それを気づかせたのがアクマだったという点だ。彼も才能さえあればヒーローになれたはずだ。それなのに才能のある人間が怠慢をしている。これは見ていられるはずがない。せめて才能のある奴が羽ばたいてヒーローになってほしい。それが彼の望みだったのだろう。そして彼はヒーローを目覚めさせた。そして羽撃くヒーローを見てアクマも救われる。この物語でアクマはヒーローのサイドキックとなったのであった。
このような救済のチェーンというかお互いが救い救われるという関係の描写がとても巧みであった。
さらにすごいのは、僕達一般人にも救済される可能性があるということを江上くんを用いて描写している点だ。おそらく才能も努力も主要キャラには遠く及んでいないであろう彼だったが、彼もやはり卓球が好きだったということが決勝戦を見ることで気付いた。そしてヒーローたちのファンになることでサポートをするという立ち位置に付いている。これなら僕達でもできるし、このような等身大のスポーツの愛好の仕方もあるということを気づかせてくれる。そして最終話の序盤では彼とは対比的に試合を見に行かない選択をする一般人を強調して描写している。これは救済のチャンスはどこにでもころがっているが、それをつかむか選択するのも自分次第ということを示しているように感じる。これは同じ湯浅政明監督作品の四畳半神話大系でも描かれているし、これは意図的にそういう見方もできるようにつくっている気がする。
色々書いたが要するに江上くんがモブキャラではなかったのだ!間違いなくこの物語のメインキャラとして扱っていいし、そう製作者側も思っていると思う。
総括すると、ピンポン最高でしたwノイタミナはこういう作品を定期的に作って欲しい。