「劇場版美少女戦士セーラームーンR(アニメ映画)」

総合得点
69.1
感想・評価
71
棚に入れた
520
ランキング
1907
★★★★☆ 4.0 (71)
物語
3.9
作画
3.9
声優
4.1
音楽
4.0
キャラ
4.0

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ネタバレ

雷撃隊 さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 4.5 作画 : 4.0 声優 : 5.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

文句無し、90年代の傑作

いつかこのサイトでセーラームーンについて熱く語ってやれ、と野望を抱いていたので語らせてイタダキマス。新作も動き出したことだしいい機会なので。当時中学生、野郎3人で見にいった。最後の回だったので男性客がやたらと多かったのが印象的。相方の一人はベテランのファンで一人は初体験で結果全員大満足だった。

この「映画1」はセーラームーンがシリーズで最もポテンシャルを発揮した作品だ。放送も二年目で人気も最盛期。これが全体のマイ・ベストだ。植物エイリアンの巨大隕石が地球に落下。セーラーチームが阻止する。敵は植物なので触手だー(笑)、ということで幾原邦彦的な色使い全開だ。隕石落下阻止のシーンは背中に震えが来るぞ。ちなみに古谷徹さんにとっては隕石の落下阻止は二回目だ(笑)。僕にとってはアムロと並んでタキシード仮面様は古谷さんのスタンダードだ。悶絶しそうな臭い台詞も古谷さんなら許せる。二代目の野島さん、三石さんのベストな相手役務まるか?古谷さんに負けんなよー。

90年代は3DCGは粗いが作画がやたらとレベルが高いのが多い。TVシリーズは当時から作画のバラつきが多いと言われていたがメインデザイン担当の只野和子氏や伊藤郁子氏が作画担当の回はレベルが高かった。映画は全編ハイレベルな作画でヌルヌル感が半端ない。変身、必殺技のバンクショットも手直しが入りカッコよさ倍増。輪郭線が細くなってて美しい。クライマックスの戦闘は今ならCGになりそうな部分までセルで描き込まれていて2000年代とは違った迫力がある。BGMの主題歌とのシンクロも完璧だ。やっぱいいわ、これ。ここ数年の萌えアニメやハーレム路線とは格が違う。

さてさて、セーラーチームには昨今のテンプレ女性陣には無い自然体な魅力がある。これは恐らくオタ男子ありきではないのが原因だろう。オタ男子ありきの美少女キャラはどこか不自然というかカメラ目線のようなあざとさが付き纏う。この自然さは他の萌えキャラでは表現不能だろう。続いてガジェットについて。男性向けじゃなくても男がカッコイイと思える要素が多い。主人公うさぎちゃんの月桂樹のエンブレムや仲間たちの現実に存在する天文記号のエンブレムなんかはロックバンド的なカッコよさがある。亜美ちゃんが使うノートパソコンもしゃれてたし。スカーフ止めのブローチのフタを開けると銀水晶のリミッターが解除されプリンセスの姿になり超必殺技が発動、というシークエンスは男子にもカッコよく映ったものだ。5年のうち10回も使って無いのでヤマトの波動砲より使用頻度が低いが却って印象的だ。「まどか・マギカ」のアルティメット・まどかを見て「プリンセス・セレ二ティじゃん」と思った方、恐らく同世代でしょう。ちなみに僕、月野うさぎと実年齢一緒だけどとても同い年には思えず年上のお姉さん
にしか見えなかった。後のEVAのアスカやレイなんかはホントにクラスにいそうな気がしたけど。

またこれまで男キャラの専売特許だったことを月野うさぎが全部やらかしてくれた。ここがミソ。「信じること」「仲間を守りたい」「生きて帰るための戦い」こういう一種男気にも通じるカッコよさに痺れる憧れる。女の子の世界を覗いてるような気分や精神的な女装コスプレ気分も野郎のファンにとっては背徳的なスパイスになってたわけだけど。とにかく戦士の心意気や気高さに男女の差なんて関係無いわけだ。ここらへんが後に女性キャラの方が動かしやすいという環境のもとになってゆくわけだが・・・。

キャラデザもまたセンスいい。派手すぎず地味すぎないバランス感覚が秀逸だ。原色になりすぎない中間色が特徴的だ。マーキュリーのエメラルドブルー、ジュピターの濃いグリーンなどいいカラーリングだ。プリキュアはどうもゴテゴテと装飾過剰で好きになれない。このカラーリングのセンスは「まどか」や「なのは」に受け継がれた。私服の飾り気の少ないセンスの良さは禁書目録の佐天さんや初春さんたちに受け継がれた。ちなみに後にJCの中核となるスタッフが原画や動画で参加している。今メインで活躍しているアニメスタッフの名前を原画のその他大勢扱いで見かけるのでエンドロールをチェックしてみると面白い。

音楽について
主題歌「ムーンライト伝説」は言わずもがなの名曲だが劇中で使用されると化ける。1期最終話の決戦で五人の力が一つになるシーンは屈指の名場面だ。曲のポテンシャルが最大限に引き出された名シーンだ。「映画1」の「MOON REVRNGE」はメインキャスト五人によるキャラソンだがこれまた熱い神曲だ。隕石落下阻止の場面を華麗に演出。それぞれのソロ・パートに合わせて回想シーンが入る。戦闘とのクロスカットも絶妙だ。うさぎちゃんの名台詞「大丈夫、あたしは死なないから」「みんなを守って地球に帰ってみせる」
「みんながいるからあたしと銀水晶は強くなれる」男気にも通じるカッコよさだ。このシーンは1期最終話が三石さんが欠場だったため幾原邦彦監督の文字通りの「リベンジ」とも解釈できる。全員で必ず生還する、という意思の強さがなんと気高い。さすがプリンセス、やる時はやる。この場面で感動しない奴は男じゃねーぞ(笑)。
TV2期でEDと挿入歌を担当した石田曜子さん、スト魔女の「わたしにできること」でおなじみのあのお方だ。「胸に誓う愛の戦士よ」は名フレーズだ。スト魔女で懐かしさを感じた方は恐らく同世代だろう。

この「映画1」は主人公月野うさぎという人間を最も深く描ききった作品だ。彼女を中心に仲間たちが絆を再認識してゆくわけで彼女はやはり最高のリーダーであり恋人であり最良の友なのだろう。マーキュリーやジュピターたちが「一番大切なもの」と喩えていたのが理屈じゃない「愛」を感じた。幾原邦彦監督、佐藤順一監督、只野和子氏等初期スタッフによるセーラームーンがやはりしっくり来る。今でもCSで再放送されると録画して見返す。
萌えでも燃えでもない自然な面白さがそこにあるので初心に帰れるんだよね。

長々と書いたけど男性オタありきじゃない自然体のバイセクシャルな魅力がこのシリーズの成功のもとだったのでは?
テンプレな萌えにうんざりした人、このセーラームーンをチェックしてみてはどうでしょうか。今の萌えキャラに足りないものが解るはずですよ。

投稿 : 2014/06/22
閲覧 : 416
サンキュー:

8

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