景禎 さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
ピンチの時には必ずヒーローが現れる
かなり前に連載されていた漫画作品。かつて実写映画化もされたらしいです・・・見てないですが。
タイトルどおり、高校卓球を通して描く友情、青春、一応はスポ根ものです。
作風はかなり風変わりで、見始めはその風変わりさに面食らってしまい、切ろうかな・・・どうしようかな、と迷いながら見ていたのが正直なところです。
原作の松本大洋さんの作品は、人物も背景もぐにゃぐにゃの線でグチャグチャ描く独特の作風のようで、アニメ化にあたって原作漫画の持つ雰囲気をできるだけ忠実に再現しようとしているようです。私は原作未読ですが、アニメを見て、ある程度原作の雰囲気を掴めたような気がしてます。
このアニメの風変わりなところ。漫画の手法を積極的にアニメに取り入れています。
作画は線画中心で、着色は水彩画風だったりモノクだったり、中には着色無しのところもあります。
漫画のコマ割りのように画面を区切って、そのコマに次々に静止画をハメていったり、別の視線からの映像を同時に動かせたり、コマに区切って順次映していったりします。
試合などの動きのあるシーンでは、まるでパラパラ漫画のように視線の方向を自由自在に変化させつつ、画面上を背景と人物がいっしょになって踊り回ります。そこには普通のアニメとは異なった躍動感があります。
特にOPアニメの躍動感はすごいです。ただし、1、2話は製作が間に合わず(?)急遽作成したと思われる、寄せ集めの動画で乗りきってます。3話はOP独自の動画ですが、まだ未完成、4話以降になって、やっと完成版が使われ始めます。
キャラデザインもかなり癖があります。
ペンの線でグチャグチャ書いた左右非対称のゆがんだ顔。星野(ペコ)はともかく、月本(スマイル)はどうやらイケメンの設定らしいし、百合枝(風間の彼女)に至っては、目を見張るほどの美女らしいのですが、絵からは全く想像もできないです。
物語の進行面でも特徴があります。ほとんど説明らしい説明がなく、見る人は画面とセリフだけを頼りに感じ取らなければなりません。なのにストーリー進行は登場人物ごとに複数のドラマが同時に進行して行くオムニバス風スタイルなので、流れを把握するのはなかなか骨が折れます。
序盤はペコよりスマイルのほうがよく登場するので、スマイルが主人公かと思っていたました。でも実は主人公はペコ。小学校からの幼馴染のペコとスマイルが高校生のころのお話で、卓球を通して人生とは何か、特に「才能」と「努力」についてを深く考えさせてくれる内容になってます。
終盤はインハイの神奈川予選。その中でも準決勝と決勝を描くラスト2回は神回です。
最終回のラストシーンは後日談。
{netabare}2019年。孔文革は日本に帰化していて世界代表に。ペコは世界代表のエース。ドラゴン(風間)は世界代表をはずされ、月本はタムラ卓道場でコーチをしながら小学校の教師目指して教育実習を控えています。
ドラゴンがタムラ卓球道場に現れ、海岸でスマイルと二人話すシーン。本編中はあまり人間臭く描かれなかった二人が丸くなってています。その会話の中で、この作品の最も重要なメッセージが示されます。それは「すべてを肯定」。
風間「自分がこのまま凡庸な選手で終わってしまうのではないか。」
月本「いいじゃないですか、凡庸。僕、わりと好きですよ、そういう選手。」
風間「ばか言うな。いやだよ。」
(中略)
月本「本当は、卓球に賭ける人生も悪くないと思います。」
風間「いやだよ。そんなの絶対。」
・・・どっちもいやなんかい。
人生なんてもん「どう生きなければならん」とかなく、全てが正解。楽しいことをすればいいんだよ。{/netabare}
最後のセリフ。
月本「ふわぁぁぁ。眠いわ。」
これがまたこの作品を象徴しているようですね。
OP、EDは動画、音楽ともにすばらしい。
OPはぶっ飛んだ音楽にぶっ飛んだ動画。EDはぶっ飛ばないが、これはこれでいい。ED音楽はメロディー進行に音階が多用されていて、音程が取りやすく、リズムも単純でカラオケとかで歌いやすいですね。音域もさほど高くないし、キーを変えなくても原調でも無理なく歌える。一度試してみてください。