「C - The Money of Soul and Possibility Control(TVアニメ動画)」

総合得点
84.8
感想・評価
3618
棚に入れた
19263
ランキング
273
★★★★☆ 3.7 (3618)
物語
3.8
作画
3.7
声優
3.6
音楽
3.6
キャラ
3.7

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ネタバレ

bana-g※更新減 さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.6
物語 : 2.0 作画 : 3.0 声優 : 2.5 音楽 : 3.0 キャラ : 2.5 状態:観終わった

「合成の誤謬」をそのまま形にしてしまったようなデキ。視点と主張の強引な対立軸化が敗因か。

「Money(金)」をメインの軸に据え、現実へも多大なる影響を及ぼす金融街なる裏世界を舞台に繰り広げられる物語。ざっくり言えばそんなところ。



蛇足だろうが、サラッと観て理解した範囲で顛末をまとめる。

何者かによって選ばれ、金融街への出入りを許されたものは、自らの(周囲を含む)未来をチップに、資産(アセット)を手に入れる。
具現化したアセットの超能力で他のトレーダーらと戦い、金を増やしてゆくゼロサム?ゲーム。
金融街での勝敗、資産の増減は現実世界にも波及するという設定らしく、敗者の周りで希望・未来が奪われ、資産の多寡に比例して奪われる未来も規模を増し、
リーマンショックのような経済危機を引き起こすこともある。国が宇宙から存在を消失する規模の世界改変も場合によっちゃあ引き起こされるようで、
凄まじい規模の未来を喰らう負の影響を「C」と呼ぶようだ。金融街の通貨であるミダスマネーが存在するが故にこのCも存在しているようだがここは記憶が曖昧。



結末を単純化すれば、Cに呑み込まれようとする危機を前に、対立軸たるミクニの、死んだら終わりだ!やがて来る未来を犠牲にしても今を大事にしよう、の主張と
希望の無い暗い未来に意味はない!将来に負担を押し付ける姑息療法はやめて今と向き合えよ、的な主人公の主張のぶつかり合い、かな。結果的には、
ミダスマネーは消失し極東金融街も消えて、円の代わりにドルが流通している日本では人々が未来を失うことなく暮らしている様子が、明るいトーンで描かれる
エンディングを迎えた。


さて。ハッピーっぽい色合いを使って濁してはいるが、納得のいかない部分が個人的には山積みでもうどこから突っ込めばいいのやらという感じ。正直、ひどいデキだと感じた。
既に勝手なまとめはネタバレしちゃっているので以下は疑問整理も兼ねていくつか思ったことをつらつらと自己満レビュー。





◆レビュータイトルの意味◆

{netabare}世界の行く末が主人公の手に委ねられる結末はごくごく陳腐な展開だけど、本作ではまぁ納得できない。それはラストを迎えるまでの主人公描写に破れも綻びもあり、
文字通り破綻しているように感じられたから。わざわざ思い返すまでもなく主人公は金に苦しむ平凡な経済学部の大学生で、
将来は公務員として安定した給料、慎ましやかな家庭を夢を思い描き勉強中のごくごくありふれた人間。

とりわけ優れた才に恵まれるでも、有り余る金がある訳でもない。アセットの真朱(ましゅ)に恵まれただの、親父もかつては金融街で...と因果を仄めかす描写はあれど
能力に直結する理由ではない。作中で「金は力である」・「金は信用である」と言及されたが、それは至極もっともだと思えた。翻って、主人公はどうだ。
札束で頬をひっぱたいてコンビニに来たDQNを追い返す力も無ければ、他者が信頼を寄せるほどの才覚もなく、選択肢の前でうだうだと考えている間に他者から助けてもらい、
最後の最後もジェニファー・サトウから譲り受けたアセットと、真坂木から故なく譲り受けたダークネスカードで決着した。主人公に中身がない。


途中、これではいけないという決意の現れがミダスカードを燃やしてみるなんて行動として顕在化したのだろうが、先々の展望を読まない行き当たりばったりの短絡的な行動でしかない。
普通を当たり前に享受し、流されるままに生きる集団から頭一つ抜け出す行動力は確かに主人公らしさを帯びていて、それなりにらしく映るのは事実だろうが、
詰めの部分を他者による借り物の力に頼って乗り切るのであれば、形式的に主人公であり物語の帰着として上手く描かれていたとしても、視聴者に対する魅力の一点で、
主人公の資格を放棄しているのと同義ではないかと考えてしまった。つまり、こいつじゃなくてもいいよね。主人公、魅力に欠けちゃうな、って話。


タイトルに戻るが、平凡すぎる余賀 公麿の主人公像は、日本の国債を一人で買い支え、いくつもの名前を持ち極東金融街を牛耳るミクニの考える理想の対立軸と
するにはあまりに荷の勝った役割だったという話だ。安定を求め平凡を享受する単なる大学生役だったならば納得していたことだろう。身内のケンカ程度ならこういう主張
の違いも成り立ちうるかもしれないが、世界の有り様、行く末を決定づける大きな岐路の前では、主人公に主人公たる中身が伴っていなければこの舞台に立つことは不自然に思えて仕方なかった。{/netabare}




◆バトルシステムの存在意義◆

{netabare}明らかに設定の練り込み不足。戦略らしい戦略も皆無。もし仮に単純に映像的な派手さをだそうとしただけで当初から戦略を描くつもりがなかったとしたなら尚悪い。
半端なバトル展開ほど無駄なものはないからだ。戦闘に予算も時間も割くぐらいなら、もっと主人公の内面描写であったり、ストーリーの捻り具合に頭を使った方がマシだったんじゃないだろうか。
同じノイタミナなら、サイコパスぐらい中身を練ってほしいな。まぁあれは虚淵の力だろうけど。ともあれ、「Money(金)」という面白い題材だっただけに、
シナリオもバトル演出も共倒れしてしまった感が拭えないのは非常に勿体ない。{/netabare}




◆ヒロイン不在◆

{netabare}羽奈日の出番もっと増やせやぁああ!!
真朱は...まぁキスシーンもあってヒロインの位置づけなのだろうが、中身空っぽの主人公に惚れるまでがちと強引かな。
主人公の魅力不足が、観ている方からすれば裏返しとしてヒロインの持つ好意に疑問符を投げかける。
キャラデザも特に魅力的じゃない。戸松遥は誰でも戸松遥だな。いや、好きだけど...{/netabare}




◆主人公の選んだ答えに対して◆

{netabare}主人公の主張は形式的にはミクニと対立していて、ミクニの敗北宣言を以て終局を迎えるには迎えた。
ただしそれは、2つの選択肢から一方が選ばれた事実を表しているにすぎず、平然と、危難は去りましたでは合点がいかない。

極東金融街が閉鎖されて未来が再び人々の手に可能性の形で舞い戻ったとしても、他の金融街はそのまま存在しているだろうし、
日本がミダスマネーを遠ざけようが、グローバリゼーション下の世界経済では貿易や人・サービスの移動は依然続く。
ミダスマネーに手を出すことで仮に北米金融街が火傷を負ったとすれば、波及的な影響は作中で一般人の記憶からも地図からも消えたカリブ共和国やシンガポールのように、
その災禍は知らぬ間に日本という国の消滅に伴って、多くの人々の明るい未来を、人知れずだが理不尽に奪っていくリスクも当然残るだろう。
主人公が選んだ答えはこういうリスクの上に立った非常に不安定なもののはずなのに、まったくもって触れられなかったのが個人的に釈然としなかった理由だ。

もう1クールあれば...ってのは言い訳になるようでいて言い訳にはならない。
足りないとわかっていて世に出すというのは、不良品とわかってて売りに出すのとかわらない。
厳密には違うし、現実に被害はないから別に構わないのだけれど。{/netabare}



少ない制作期間で何本もヒットをだすのは当然並大抵のことではないが、たまに傑作が出ることもあるし、これからも期待半分諦め半分でノイタミナ枠を観ていくことになりそうな気がしてる。以上。




※サラッと観たので理解不足と勘違いが有ればご愛嬌。
 あまり参考にはならないレビューかと。

投稿 : 2014/07/19
閲覧 : 246
サンキュー:

5

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