「風立ちぬ(アニメ映画)」

総合得点
71.8
感想・評価
815
棚に入れた
4289
ランキング
1270
★★★★☆ 3.8 (815)
物語
3.9
作画
4.3
声優
3.3
音楽
4.0
キャラ
3.7

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ネタバレ

無毒蠍 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.1
物語 : 2.5 作画 : 3.5 声優 : 2.5 音楽 : 3.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

堀越二郎の半生を良くも悪くも丁寧に描いた作品で人によっては地味で味気無さが目立つ作品になると思う。ドキュメンタリー映画を観てるような印象でした。

宮崎駿監督の長編アニメーション引退作品。
有終の美を飾るに相応しいかどうか賛否両論になりそうな内容に感じました。
宮崎駿監督はアニメは子供のためのものであるという想いから
本作の映画化はまったく考えてなかったらしいです。
内容からいえば当然だと思います、
子供には難しいだろうし、そもそも子供が興味でる内容ではないです。
実在の人物をモデルにした作品なので興味でないとかあまり言いたくないのですが
僕が子供の頃に「風立ちぬ」を観て楽しめてる姿がイメージできません。
子供向けではないので監督自身も映画化は考えていなかったのだが
紆余曲折あり映画化にいたったみたいです。
本来はこういった作品を映像化したかったのかもしれませんね。
ある意味、宮崎駿監督はオタクやマニアの類なんだと思います。

さて、内容のほうですが主人公は堀越二郎という男性で子供のころから飛行機に憧れを抱き、
航空工学を学び技術者として設計に没頭する日々を描いてるのが本作です。
良くも悪くも彼の半生を描いていく流れが丁寧で淡々としてるんですよね。
今までのジブリ作品のようなエンタメ性は乏しいです、
盛り上がりどころというのもありませんし、
盛り上がるというよりは心にしみわたる系のお話です。

堀越二郎の声優さんはエヴァンゲリオンで有名な庵野秀明監督です。
日ごろから親交があったのは知ってましたが
まさか自身の作品の主人公に抜擢するとは予想だにしてませんでした。
宮崎監督の主人公のイメージでは滑舌がいいらしいけど、
庵野さんはお世辞にも滑舌がいいとは言えなかったね。
最終的には存在感で選んだらしいからまぁいいのか。
最初はちょっと気になりましたが観てるとそんなに気にならなくなります。
徐々に世界観にキャラクターが浸透していくイメージでしょうか。
堀越二郎というキャラクターは勉強ばかりしているインテリ系に見えて、
実は腕っぷしも強かったり人柄もよく、良くも悪くも人をひきつけるタイプでした。
ちょっと融通のきかなさそうなところもあるけど、
簡単に自分の意思を捻じ曲げる人より好感がもてます。

物語の世界観は雰囲気的にコクリコ坂にちかいかもしれません。
ああいった戦後復興して間もない印象の街並みや雰囲気です。
個人的に好きな世界観ですね、古き美しい時代の日本です。
イメージ的には火垂るの墓とコクリコ坂の間くらいの内容かな?
火垂るの墓ほどシリアスではないけどコクリコ坂ほど陽気でもない。
一番最初に書きましたがアニメーションというよりは、
ドキュメンタリーです、堀越二郎の半生をアニメーションという枠を借りて描いてるにすぎません。
淡々と描写しながらもアニメーションだからこその演出はされており、
ジブリらしい夢と現実の境界をうまく再現した見せ方だと思います。

そんな堀越二郎が航空学に没頭するなかで出会ったのが里見菜穂子。
後に相思相愛になる二人ですが菜穂子は架空のオリジナルキャラクターみたいですね、
このように忠実に再現してるわけでもなく宮崎駿監督独自の脚本も加わっております。
菜穂子という女性は繊細さと気丈さ、そして何よりも美しさを併せ持ったキャラクターで
まぁ実際にこんな女性がいたら好きになってしまうだろうなぁ、と(笑)
こういったキャラを見るたびに思うけどこんな綺麗な言葉づかいで、
男性に寄り添うようにそばにいてくれる女性なんているんかいw
ストレスフリーな感じでとても素晴らしい女性だと思います。
結核を患ってるということですが二郎に苦しんでる様子など微塵も見せず、
自身の美しい部分だけを二郎に見せてくれてましたね。
女性の意地というか矜持というか彼女のたくましさを堪能させてもらいました。
なにより可愛かったしね!甘え上手な女性でした。

この作品は大きくわけると飛行機と恋を描いた作品になるんじゃないでしょうか。
その二つを描いたドキュメンタリーなのです。
子供のように飛行機への想いを、夢を語る二郎だけど言ってしまえば戦争の道具なわけです。
自身の設計した飛行機と結核と戦う菜穂子を通じて生きるとはどういうことか?
二郎自身が、そして視聴者たちが考えさせられるような内容になってます。

「生きねば。」
純粋なハッピーエンドという感じでもありませんが
上記のキャッチコピー通り前向きな終わりのようにも思えます。
そもそも人間の半生を描いた作品なので幸せだったかどうかなんて
それこそ生涯を終えるその時までわからないでしょう。
いい人生だったと断言するためにも彼は「生きねば。」

堀越二郎の「生きねば。」という想いの原動力は里見菜穂子という一陣の風でした…

「風立ちぬ、いざ生きめやも」

【B+75点】

投稿 : 2014/06/19
閲覧 : 343
サンキュー:

9

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