manabu3 さんの感想・評価
3.8
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 4.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
お金のあり方を問うアニメ
金融を扱った斬新な設定とお金とは何かを考えさせるテーマ性を包含する希代なアニメ。
「金融街は不滅なのです」
この作品には幾つかの立場が存在するが、どれが正しいというものではないと感じる。世の中の理不尽さを理解しその存在を肯い生きていく者。否み破壊しようとする者。このアニメの意図はその答えを提示するものではなく、お金のあり方を含めた諸問題に対する問題提起だといえる。設定が良かっただけに十一話という短さと、最終話の結末だけが些か残念だったが、作品のコンセプトは非常に面白かった。
以下は主に批評
{netabare}■三國との対立
様々な思想が繚乱する作中に於いて殊に主人公の考えは曖昧に思えた。それが主人公の役割なのかもしれないが、「みんな正しい」というコンセプトを持った作品であるのならば、終盤での三國との決裂は今までの流れを全て台無しにしてしまったとように感じる。現実的に考え、今出来る事をしてきた三國と対立する理由や必要性は本当にあったのだろうか。主人公は「未来がないのに救われたってしょうがない」と主張する。世界が再編しても、(国が消滅しても、日本の通貨がドルになっても)、現在なんかより未来が大事だということなのだろう。それもまた一つの考えなのかもしれない。しかしながら最後の最後で滅び行く日本を救うべく行動した三國が打ち負かされてしまったことは、個人的に残念だった。
■不快かつ啓発的なバッドエンド
2011年に放送したこの作品が、米国発の金融危機を少なからず意識して作られたものであるのならば、最終話に日本の通貨がドルになってしまったことは、米国型資本主義に対するアイロニーだと思いたい。これは不快かつ啓発的なバッドエンドだ。ドルが通貨となった日本においても、真坂木は「金融街は不滅なのです」と主人公に言った。例え未来を買い直したとしても世界から金融街やマネーゲームがなくなることはない。真坂木はそう言いたいのだと思う。(そしてそうであるのならば)主人公が取った行動は、ただ現実から逃げただけだと言えるのではないだろうか。何故なら何処へ逃げようが「金融街は不滅」、なのだから。私個人は市場万能・株主至上の金融資本主義を良しとは思わない。それでも真坂木が言うように、金融街がなくなることも、マネーゲームがなくなることも、人間の自由を慮れば困難だと言わざるを得ない。即ち、三國が取った行動のようにこの世の膿と共存しながら生きていく方法を(少なくとも今は)模索する。故に私は、主人公の最後の行動が現実から逃げただけだと思うのかもしれない。{/netabare}