にゃっき♪ さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
eternal triangle after a festival
前作のヒロインであった歌手の名前が出てきたりしますが、完全に独立した作品です。
キャラ萌えより三角関係の心理描写を丁寧に描いた恋愛ドラマで、音で相手に何かを伝えようとするなど、歌詞も含め音楽が重要な意味を持っているように感じました。
主人公は学業成績が主席で卒業後の進学も決まっている優等生の北原春希(きたはらはるき)。
ヒロインは学園のアイドルの小木曽雪菜(おぎそせつな)と、ピアノの天才少女の冬馬かずさ(とうまかずさ)。
3人ともスペックが高く設定されているのは鼻につきますが、それぞれ人間関係について、仲間外れにされたトラウマや家庭環境のトラブルを抱えています。
前半は、高校三年生の三人が、軽音部のメンバーになり、残り少ない高校生活の思い出に、学園祭のステージに向けて練習する日々が描かれます。
最初は「俺」「おまえ」のような呼び方をしている男女関係に違和感を感じますが、脚本を信頼するなら、もっと前から積み上げたものの存在を示唆していると考えるべきでしょう。
精神的な弱さも含め雪菜が魅力的に描かれ、視聴者が彼女を好意的に受け取れるように誘導しているようにも思えます。もっとも雪菜がカラオケボックスで中島みゆきの「悪女」を選択しているのには嫌な予感がしましたけど^^
三人の立ち位置の変化と時系列に沿って物語の裏側を描いた回想編を挟んだ後半の構成は素晴らしいです。誰に感情移入しても、やるせない気分にさせられるのは間違いないと思われますが、鬱展開を受け入れられる精神的余裕があるなら、ぜひ視聴する事をお薦めします。
人と人が関われば、互いの望む相手との理想的な距離感はいつも揺れ動いています。もっと近づきたいと願っても、そう意思表示するだけで、相手が離れていくようなケースも少なくありません。恋愛では一対一が前提になり、売り切れていれば他を選ぶのも当然の事ですし、自分にはすでにパートナーがいても、心惹かれる異性と出会う事があるのも良くある話です。一時の感情や欲求に流されてすべてを失うことになるのか、すべてを捨てても手に入れたい宝物だったと後になって気がつくことになるかわかりませんが、手に入れたいものがあれば、失うものがあるのも当たり前の事でしょう。
ただ、すでに気になる相手がいて、その相手にはすでにパートナーがいるわけでもないのに、自分の気持ちの整理もつけずに他の相手を受け入れるのはどうなのでしょう。気持ちよく即答したくなる誘惑もわからなくもないですが、順番を間違えてはいけません。
自分を含めて周囲の人間同士の距離感を固定するのも無理な話です。変わらないで欲しいと願うのを否定しませんが、人と人は近づきすぎたら離れていくしかありません。離れても、一緒に過ごした時間を懐かしく振り返り、互いにとって大事な思い出にできるなら、それで必要十分だと考えるべきです。
いくらサインを出しても、言葉にしないと伝わらない相手が実際にいるのかわかりませんが、伝えずに後悔するのは残念すぎます。もっとも言葉とはその内容以上に、なぜそんな言葉をわざわざ口にするのかの意図が重要かもしれませんが。
誰でも、寂しくて人のぬくもりを感じたいときもあれば、人間関係が煩わしくて一人になりたいときもあるものです。どちらの時間が長いかは人それぞれですし、自分とパートナーの状況がいつも一致する事は滅多にないでしょう。お互いが相手に歩み寄れば理想ですが、たとえ普段はどちらかが一方的に相手にあわせているようなケースであっても、何とか寄り添ってやっていける相手に出会えたなら、巡り会えた奇跡を感謝する気持ちを忘れてはいけないのでしょう。