にゃっき♪ さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
beyond the boundary
現代の地方都市が舞台ですが、作品世界には人の負の感情が具現化した妖夢とそれを討伐するのを生業と知る異界士が存在します。妖夢は人には見えない悪霊のようなものから、無害で人に紛れて生活しているものまで様々なタイプがあって、強力な妖夢には「虚ろな影」などの二つ名があり「境界の彼方」とは世界を破滅に陥れる最悪の妖夢の呼び名です。
異界士の母と妖夢の父の間に生まれた半妖の少年。
自分の血液を剣にする呪われた一族の末裔の少女。
出会ってしまった二つの孤独な魂は惹かれあいながらも、運命の渦に巻き込まれていくダークファンタジー...のつもりで視聴していましたが、ギャグが目立つ純愛作品と考えた方が良いような気もします。
この作品には最初から違和感や矛盾が付きまとっています。
物語が始まって早々に、主人公を妖夢と思い込んで襲ったヒロインの刃、それにも関わらず自宅にとりついていた妖夢すら怖がるヒロイン。初見では、冒頭にインパクトを与えるために派手でショッキングなシーンを無理やりねじ込んだのかと思いました。
3話で、主人公にはヒロインと違って仲間がいると言ったヒロインは、主人公を取り巻く文芸部の人間関係を幽霊部員である3年生の先輩の名前まで知っていました。なのに5話で先輩を紹介され、初対面である事かわかったときは脚本ミスかと思いました。
ヒロインの「不愉快です」が嘘か本当か見抜いた少女はどこで真偽を区別していたのでしょう。ヒロインの言葉に嘘と真実が混在している事を暗示され区別の仕方を教えられるまで、この作品の視聴方法に気づかなかった私はかなり間が抜けていました。
先輩達の作品から文芸部の傑作選を選ぶにあたって「読者にとって大切なのは、行動と意味だと思う」という台詞や「赤ずきん脱いじゃいました」の暗喩など、手の込んだ伏線やミスリードに彩られた素晴らしい作品なのは間違いないと感じます。
しかし、似た者同士であるお互いだけが孤独を埋めあえる純愛作品を、ただの眼鏡フェチのように見せた意図がわかりません。妹萌えもそうですが、性癖は他人に隠したいから性癖だと私は思っています。誰かに知られて暴露されたら、築いてきた周囲の人間関係が崩壊するような爆弾ぐらいの扱いが妥当で、性癖自慢するような下世話な会話を並べるための設定だけの性癖にはうんざりです。
完全に浮いている6話のダンス回も不要です。キャラデザにも言えますが、京アニに視聴者が期待しているものに答えようとしたのでしょうか。過去のヒット作の呪縛から解放されたいのかどうかもわかりませんが、作品全体の空気感やカラーを阻害する要素を切り捨てられないところに限界を感じます。