にゃっき♪ さんの感想・評価
4.1
物語 : 3.5
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 3.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
kiss me sweet
毎回が2話構成で、お約束のキスシーンがどんなTPOで来るかを楽しむ日常作品です。
中学校時代から仲の良かった高山春香(たかやまはるか)と園田 優(そのだゆう)は同じ高校に進学しますが、相手と特別な絆を欲しがった二人は、桜の花びらが舞う誰もいない教室で初めて唇を重ねます。
最初からこんな調子では、どこまで深い関係に発展するのかとか、どちらかが他の相手ともキスしたらどんな修羅場になるかとか、下衆な妄想をした私はお馬鹿でした。
彼女たちはピュアです。
最初は背景に男子もいる共学校なのですが、文化祭の回で、ステージのシュールなコンビ漫才と屋台で焼きそば売ってるぐらいしか、男子生徒には台詞もありません。
これは女子高だから男の代用品などと解釈して欲しくなかったのであり、男女を意識すらしてないくらい相手しか見えなかった事が伝えたかったのだと勝手に思うことにします。
相手との間に特別な絆を欲しがるのは恋愛の本質なのかもしれません。
でも身体を許そうが、子供が出来ようが、相手の心変わりを止める術はありません。たとえ結婚しても離婚する事が許されていますので、戸籍に離婚歴が残るだけの事です。
結婚は、お互いが家族となって新しい暮らしを始めるパートナーである事を周囲に認めてもらう儀式であって、互いが相手の心変わりを縛るための最終兵器ではないのです。
むしろ夫婦になった事で、離婚を口にするという決定的な別れを告げる方法がオプションとして追加されるだけだと言ってもいいでしょう。
作中で、もう手に入らないと思って欲しがっていたマフラーに在庫があって、手に入れられるとわかった瞬間に、別の気に入ったものが目に入るエピソードがあります。
欲しいという強い思いのために、正常な判断力が失われていたのでしょう。世の中には結婚していながら別居している男女もいれば、籍を入れないまま長く寄り添って暮らす男女もいます。障害がなくなった事で道が開けるのではなく、目が覚めるようなケースも少なくはないように思います。
誰もいない教室で二人は桜の花びらの魔法にかかっただけかもしれません。
相手を縛る意味も自分を縛る本質も考える暇もなく、ただ誰より大事に思える相手との絆を確かめあうためにキスを重ねた一年間。そんな儚くも眩しい時間をちょっとドキドキしながら優しく眺めてるのも悪くないなと思える方に届くなら、それで十分な作品なのだと思います。