DOLLmimoza さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
セーラの中の人:お姫さま声優「島本須美さん」
原作は「小公女(A Little Princess)」という小説。
1985年当時アニメ化され、フジテレビ系の「ハウス世界名作劇場」
で1年に渡り、全46話放送。46話中ほとんどの脚本:中西隆三さん。
「フランダースの犬」24.51.52(最終)話担当。2013年肺炎により死去
1979年の「ルパン三世カリオストロの城」のヒロイン、クラリス・
ド・カリオストロの声優・島本須美さん(他「TV版ルパン三世」
第155話:小山田マキ、「風の谷のナウシカ」:ナウシカ、
「めぞん一刻」:音無響子、)が、『小公女セーラ』の
セーラ・クルー役だというので注目していたが、結局、
46話分すべて見たのは、再放送やレンタル店のDVDによってだった。
-あらすじ-
裕福なお嬢さまセーラ・クルー。インドで鉱山事業が失敗して
父親のラルフが熱病で死去。セーラは預けられていたミンチン
女子学院で、富豪から無一文になってしまい、生活も一転。
ミンチン先生や生徒のラビニアたちからいじめを受け、
長い長い苦労をし続ける。亡き父ラルフの盟友クリスフォード氏が、
実はダイヤモンド鉱山を成功させていて、ラルフの破産宣告も
差止めてくれた。セーラに莫大な遺産と、鉱山の発掘経営権を
譲るために、イギリスに移り住んでいて、セーラを探して
いたのである。無事、クリスフォード氏はラルフの娘であるセーラと
巡り合い、セーラを引き取る。あんなにひどいことをしてきた
ミンチン院長にさえ、セーラは学院に多額の寄付をし、
ラビニアとも和解。インドに正式な所有権委譲のためと、
両親の墓参りのためにベッキーを連れて船に乗り、インドへ旅立つ。
1話~11話Aパート辺りはまだ不幸が訪れていないので、ミンチン
院長やラビニアに対しても言いたいことを言っていたが、
とにかくセーラの生活が一転してからが、ひどい。まあよく
こんないじめを描いたアニメや脚本を作ったというか…。
★声優について
放送当時はミンチン院長役の中西妙子さん、ラビニア役の山田栄子さん
宛てに「セーラをいじめないで」という苦情の手紙や、
カミソリ入りの手紙とか送られたほどらしい。
裏を返せばそれほどの思いを視聴者にさせたということは、
声優さんの声の演技力が素晴らしいということになる。
ラビニア役の山田栄子さんは他にも猫のシーザー、
モーリー役の向殿あさみさんは他にカーマイケル弁護士の娘、
ジャネットの声を充てていた。
制作から29年も経過していれば亡くなる人も出てきた。
ジェームス役の郷里大輔さん 2010年自殺
洋服屋の主人役の神山卓三さん 2004年敗血症のため死去
バン屋に引き取られたアンヌ役の本多知恵子さん 2013年多発性癌
により死去。
2014年「鬼灯の冷徹」5話にて牛頭:山田栄子さん、馬頭:島本須美さん、
ラビニアとセーラの中の人再び共演!!大御所の安定した演技!
当時のイギリスの身分制度が背景にあったが、アーメンガードや
ロッティ、ベッキー、ピーターに対してもお嬢様だった時から
対等に優しく接していたから慕われていたし、セーラにとっても
全編通して心の支えになったと思う。
というより要注意人物はミンチン院長、ラビニアと腰巾着二人
(ガードルードとジェシー)、ジェームス&モーリー夫妻、バロー弁護士
くらいであってそれ以外は皆、良い人たちということ。
(雨の市場で芽が出たジャガイモ売りつけたおっさんも論外)
お金、財産、地位を優先し、お金があるなしで手の平を返すような
浅ましさ、人間の醜い姿をこのアニメでは描いていた。
セーラがダイヤモンドプリンセスとなってからは、見ている方も
ホッとしたに違いない。
クリスフォード氏はキャラデザが悪いのか、老けて見えた。
アニメ設定では30代・独身というからわからないものだ。
でもこの人が登場した回からは、ちょっと安心した。
ミンチン院長に対抗出来るのは、クリスフォード氏しかいない。
★原作からの変更点
原作:セーラ7才~11才の約4年間。ラビニアとベッキーは
そんなに目立たない。セーラは結構言いたいことを言っていて
ミンチン院長と対立。最後、学院に寄付なんかしないで、
とっとと学院を去っていて、最後はパン屋さんの話で終わっている。
アニメ:セーラ10才~11才の約1年間。ラビニアとベッキーの扱いが
大きい。オリジナルキャラがピーター。ハロウィンパーティと
馬小屋の火事の話はアニメオリジナル。
学院に10万ポンド(日本円換算24億円)寄付してラビニアと和解。
←(最後、ある意味「君に届け」の爽子とくるみのようなライバルに
近いものを感じた。セーラが先生を目指していた点も爽子と同じ)
この辺、「目には目を、刃には刃を」の人なら信じられない!
という感想を抱くと思う。アニメオリジナル脚本なので、少々強引な
シナリオだなあと。おかげでセーラが女神様みたいな性格に見えた、
もしくは逆に、相手に猛烈反省させるための権力的報復と取れなくもない。
ジェシーから「だけどあの人一体何しに乗り込んで来たのかしら?」と
いう問いにラビニアが「たぶんこの学院を買い占めに来たのよ。
有り余るダイヤモンドで復讐のためにね」
もちろんセーラには復讐の気などないのは先刻も承知だが、
結果的にはラビニアの言葉どうりになったので、的を突いてると言える。
ラムダスさんが屋根裏部屋でこれまで見てきたことをクリスフォード氏に
伝えてたので、セーラが酷い目に遭っていることを知っているし、
ミンチン院長が屋敷にセーラのことで来た時、怯えたセーラを見て、
クリスフォード氏は事情を確信した場面があったし、何か堪える知恵と
して寄付を了承=全ての権利を買い取ったに等しいと思った。
だからセーラの言い分を全て通させてもらってる。
これまで苛め抜いてきた相手が、学院の経営の窮地を救ってくれたなら
どう思うだろうか?…申し訳なさ過ぎて頭が上がらないと思う。
セーラはアニメでは11才なので、ただ単に優し過ぎただけなの
かもしれない。寄付の件は父親が亡くなったことでの迷惑料とか、
アメリア先生から聞いた姉妹の苦労話を聞いたせいもあったのだろう。
原作は最後何も決着はつけていない。アニメ版は
日本アニメーション流にうまくまとめたと私的には思う。
※そういえばセーラの中の人、島本須美さんは「ルパン三世
カリオストロの城」でクラリスを演じ、ルパンのことを
おじさまと呼び、別れの時に「ルパン、きっとまた会えるわ」と
言っていたが、小公女セーラでもクリスフォード氏のことを
おじさまと呼び、船でインドに旅立つ時にロッティやラビニアに
「きっとまた(いつか)会えるわ」*()はラビニアに*
と言っていた。同じ声優つながりだからこんな台本考えたのだろうw
●作画について
元々、才田俊次さんがキャラクター・デザインと作画監督で始まったが、
体調面の都合で第1~4話と10話だけ担当して、以降は作画の方に
回ってしまう。5話~9話と11話以降は山崎登志樹さん、大谷敦子さん、
石井邦幸さん、の3人で作画監督を交代して担当している。
時代が時代なので現代のように(諸事情で仕方ないが)デジタルではなく、
作画が安定していない。大まかに分けて4種類のセーラが描かれているが
個人的には山崎登志樹さん担当セーラが一番かわいいと思う。
突出した美少女ぶりだ。
第19話「インドからの呼び声」は忙しくて下請けに出したのか、
作画の統一指導が出来なかったのか定かではないが、当時46話もの
スケジュールでは相当忙しかっただろう。手抜きセーラと
ピーターが描かれていたのは少し残念。(実は山崎さん担当回)
無理は承知で思ったこととして、全46話山崎さんの作画で
統一されていたら良かったのになあ。セーラはもちろん、
アーメンガード、ベッキー、ラビニア、ジェシー、ガートルード、
ミンチン姉妹も統一されてて一番絵が良かった。
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セル画アニメで絵の統一もされていないが、これはこれで手作り感が
あるし、セーラがいじめに屈することなく(それはそれでとても長いが)
逆転劇があるからこそ、ある意味スッキリ感があった。
このアニメ、世の中お金だ!と捉えられがちだが、当時のイギリスの
階級制度を皮肉っていたし、真のメッセージは【人に優しく】では
なかろうか?原作のセーラとは性格だいぶ変えられていたが、
セーラをものすごく良い子にすればするほど健気に映り、イジメる側との
差が際立つ。確かに日本向けだし(当時のおしんに便乗)、
最後は賛否両論あったと思うが。
同じ原作者で「小公子セディ」も作られたようだが、この作品ほど
インパクトなく、コケたとか。後にTBSでドラマ化(大幅な改ざんだった
らしい、見る気も起きなかったが)されたりもした。
アニメのリメイク化も望まれているようだが、私はこの46話分の
アニメだったからこそ、大反響があったと思う。もう他はいらない。