OZ さんの感想・評価
3.7
物語 : 3.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
吐息の白さが温もりを感じさせるお伽話
原作のゲームはプレイしていないが
key3部作と呼ばれている
『AIR』『CLANNAD』を観ていたので
気になっていた最後の恋愛作品
■吐息の白さが温もりを感じさせるお伽話■
原作が泣きゲーと呼ばれており
key作品のお家芸でもある
涙を誘う演出が見所のkanon。
すぐに慣れるとはいえ
独特のキャラクターデザインを
受け入れられるかが最初の高い壁だ。
5人のメインヒロイン
それぞれエピソードが組み込まれていて
登場人物は把握し易いが
丁寧に描写されているキャラと
そうでないキャラの差はハッキリしており
愛着の湧く人物が偏ってしまいそうな構成は惜しい。
テンポは悪くないけれど
度々過去の回想に場面転換する為
観ている側にするとやや忙しく
散らかっている印象を受けるかな。
重なり合った奇跡によって生まれる恋愛模様は
吐息の白さが温もりを感じさせるお伽話の様である。
■本領発揮の真琴編■
ダイレクトに感情を揺さぶる展開で
最も魅入ってしまったのが
第7話~第10話で描かれた沢渡 真琴のエピソード。
泣きゲーと称されるだけあり
流石はお家芸の本領発揮といったところだ。
真琴編の後半は常に目が潤み
中でも揺さぶられたが第10話。
二人だけの静かな結婚式を挙げ
間もなく短い永遠が終わりを告げるその時まで
真琴の好きな鈴の音を互いに鳴らし合う場面。
思わず感情が溢れてしまうのは
箸をろくに持つ事も出来ず
名前を呼ぶ事も出来ない程
日に日に衰えていく真琴に見せる
祐一のひたむきな優しさが響く。
”突然の別れ”ではなく”約束された別れ”なので
残された側に出来る事は限られてくる。
避け様のない運命を受け入れ
消えゆく真琴が望む事を
彼は出来るだけ叶えてあげたいと
残された時間を共にする。
精一杯の愛情を注ぐ祐一と
ただ傍に居続ける事を願う無垢な真琴。
二人の姿に自然と涙が頬を伝うばかりである。
祐一と出会った事で喜びを知り
反対に悲しみも知った真琴。
もしも彼と出会っていなければ
子狐として孤独を知らないまま
生きていったのかもしれない。
彼女にとってどちらが幸せだったのかは分からない
けれど 人間として再び出会えた事は幸せであったと信じたいね。
■祐一は軽い男に映る!?■
真琴編で涙した訳だが
引っ掛かるのはその後の相沢 祐一についてだ。
彼は何ら問題も無く 心優しい性格をしており
むしろ主人公として立派に役割を果たしているのだけれど
各ヒロイン達 それぞれ個別のルートで
エンディングを迎える訳では無く
時間軸がそのまま続いていくので
あっさりと心変わりしている様に映ってしまう。
真琴編では結婚を誓うのだが
次回から別のヒロイン達と次々仲良くなっていき
最終的に月宮 あゆを選ぶ結末で幕を閉じる。
こうなると「二人で挙げた結婚式は何だったの?」と
回を追う毎に誠実さが薄れてしまう構成は残念である。
ヒロイン達をまとめて一本のルートで統一するならば
最初から一人に絞ってもらいたかったな。
振り返ると真琴への想いは宙に浮いたままだなんだよね。
■あとがき■
奇跡が多いと揶揄されがちだが
子狐が人間の少女になっていたり
魔物と戦っている少女であったり
7年前の幻想が生み出した少女であったりと
あり得ない奇跡が最初から存在していたので
あり得るかもしれない奇跡に比べると
思ってたよりは気にならなかったよ。
ハッピーエンドに落ち着いたので
後味は悪くないけれど
全24話だと正直長かったな。
序盤の真琴編がピークだったのもあって
以降 徐々に下降線を辿り
ラストのあゆ編で若干盛り返した感じだね。
ヒロイン達の優劣では無く
完成度が高いエピソードとして
印象に残った順番で並べると
真琴編>>あゆ編>栞編>舞編≒名雪編ってところだ。
真琴編だけなら評価は高いけれど
全体を通してみると
各エピソードによってバラつきがあるので
評価は厳し目かな。
涙を流すと言っても嬉しい涙ではなく
悲しい涙が多い今作品。
嬉しい涙の方が好きだなって改めて感じたね。
満足度 ★★★★★★☆☆☆☆ (6)