田中タイキック さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
男装系女子の疾走 しかしまだまだ序章
2006年4月~ 日本テレビで放送
全26話 原作未読
超お金持ち学校で有名な私立桜蘭学院高等部に奨学特待生として入学した主人公の藤岡ハルヒ。
勉強場所を求めて偶然入った教室は学内で有名な「ホスト部」の部室だった。
ハルヒはその部室にあった800万円ほどする壺を誤って割ってしまい、その弁償のためにホスト部で働くことになる…。
ぶっ飛んだ舞台装置と破天荒な設定の中で堅実なキャラ描写と安定した作画と演出が目立った本作。
基本的には1話完結のコメディータッチ、ギャグ中心の中にほんのりイイ話や後半への伏線を張りながら
多少無理がある展開でも個々のキャラを下げないように気を配った脚本。
作画は流石に古さを感じたが美術や色彩のレベルは高かった。
ホスト部の部室なんて天井、壁、床にいたるまで全てピンク色っていう、
リアルにあったら5分と居られないような空間なのに
背景の淡い色調とキャラの塗りのコントラストが違和感なく同調してるし
ティーカップや椅子や天井なんかも、ちゃんとお金持ちっぽいゴージャスな意匠を凝らしていたりと
少女漫画でよくある何かあの、あれ、何かキラキラ~☆みたいなヤツで誤魔化さずに
嘘っぽくないセレブ感をしっかり演出していたのが好印象。
演出も良かった。1話の電球とか2話のティーカップで心情描写とか個々の回で凝った演出が目立ったけど
全体的には「扉を開ける」がキーワードにある気がした。
それは新たな道への出発であったり、過去への決別であったり、見たくない現実と向き合うことだったり
「扉」を最も効果的に使った20話の『双子のあけた扉』は他の回とは明らかに色が違うが屈指の良回。
あとEDに入る演出がいちいち良い。
曲単体には本来無いイントロを付け足して本編とEDの間をシームレスに流しているだけなのに。
ほんのちょっとの工夫で劇的に印象が変わるんだという好例。
なんやかんや言ってきたけど結局はキャラが合うかが本作の評価の分かれ目だと思う。
逆ハーレム構造だし、かなり露骨なBL描写もあるけど、
多くのBL描写はホストの営業としてのポーズであることがほとんどでギャグとして許容範囲。
金持ち特有の嫌味ったらしさは無く、馬鹿な振る舞いが多くても
決めるときは決めるホスト部員たちは男性でも受け入れやすい。
主人公のハルヒはサバサバしていて冷静なツッコミ役。たまにドライ過ぎて毒のある態度もいい。
それでいて天然に可愛い面も持ち合わせていて、坂本真綾さんの中性的な声も相まってメッチャええよね…
ハルヒは男とか女とか性別の執着があまり無く、そんな自分に特段悩む様子が無かったのが印象的。
ニューハーフでバイセクシャルな父親に育てられたっていう特殊な家庭環境のせいかどこか達観している部分も魅力的。
なんかそういうジェンダーな部分で変にドロドロしなかったのも作品全体の見やすさに繋がっているのかも。
しかし、最後まで序盤で示されていたハルヒと環との恋愛方面の発展がほとんど無かったのは気になった点。
アニメオリジナルで締めるために意図的に排除したんだろうし
原作は完結してるんだから読めばいいじゃんっていう話なんですが。
男女の意識があまり無いハルヒがホスト部との関わりの中で初めて女性的なときめきを感じる。
みたいな展開きっとあるでしょ?原作では。気になるわー。
【総評】
評判違わぬいい作品でした。
正直、前半のギャグ中心の話は温い!温いですわ!!って感じだったけど
後半、ホスト部個々の過去エピソードがどれもいい話なうえに
最終回の展開にちゃんと意味を持たせるよう構成されていて上手い作りをしていました。
整合性が高く、演出も見事に決まっていたアニメオリジナルとしては恐ろしく完成度の高い最終回だと思いました。
ああいうド直球すぎる演出メッチャ好きなんよ~。