「Angel Beats!-エンジェルビーツ!(TVアニメ動画)」

総合得点
90.1
感想・評価
14652
棚に入れた
48249
ランキング
64
ネタバレ

kids さんの感想・評価

★★★★★ 4.6
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

1クールアニメの理想を追求した有名な名作

麻枝准さんが原作シナリオを担当したオリジナルアニメです。あにこれアニメ総合ランキング17位、総合得点90.4点(2014年8月15日現在)を誇りとても人気が高い有名な作品であり、誰が観てもいい作品だと思うのではと思います。

観た人も多いと思うので、いつもとは少し違った視点から書いてみようと思います。


麻枝准さんについて
やはりこの作品を語る上ではこの人を外すことはできないでしょう。麻枝准さんはKeyのゲームシナリオライター兼作詞・作曲家で、CLANNAD、Kanon、Airといったアニメでも有名な作品のシナリオや曲を書いたことで知られています。それもあって泣きゲーの確立者としても有名です。このAngel Beats!という作品は、1クールという決まった尺の中で麻枝さんが理想を追求した結果生まれた、こだわりがいたるところに感じられる作品なのです。

例えば、「死後の世界」という設定は、感動的なシナリオを研究しつついくつもすばらしいものを作りあげてきた麻枝さんの、死を用いることで感動を生むシナリオを用いる度に「死」というものが軽くなってしまうというジレンマから生まれたものだそうです。また、主人公の音無を最初記憶を失った存在として登場させたのは、視聴者と全く同じ立場にすることで、観ている人がより作品の世界観に入り込みやすくするための配慮でもあり、ただの伏線ではないんです。それから、学園の日常(?)におけるギャグパート、迫力満点のバトル、シリアスで感動を誘うストーリーといった様々な要素を入れてテンポよく話を進めていった背景には、アニメを観ていて間延びしたりしているのが気になるから、絶対にそういうところは作りたくないという思いがあり、いろんな要素を使って作品全体のバランスも整えたかったという意味合いもあるでしょう。それからいろんな要素をうまく詰め込むためなのか、伏線のひき方がさりげなくてとても上手でした。{netabare}ちょっとしたギャグパートにしてもユイと日向がよく絡んでいたことが後の結婚のストーリーにつながるなど{/netabare}とても効率的だったと思います。ストーリー展開だけでもパッとこれだけのこだわりが感じられるのです。
他の要素もみてみましょう。画に関しては通常の他の作品よりも大幅にたくさんの画を書くことが求められ、これが臨場感あふれるバトルシーンにつながっています。画が綺麗でリアルだったのもロケハン等をしっかり行った上で書いたから(これは推測)だと考えられますし、ライブのシーンなどは実際にその曲を歌っているバンドの動きをしっかりと押さえた上で描かれているので、他作品とくらべてもやっぱりレベルが違うなと感じました。OP、EDにしても話の進行に合わせて出てくるキャラやポーズをほぼ毎回変えていたのみでなく、EDはラストで感動を誘う演出としてもとても効果的でした。缶コーヒーの中にkeyという銘柄が混じっているといったちょっとした遊びまで入っていてもう手抜きなんて言葉は全く縁もなかったです。
音楽も麻枝さん自身が曲を作ることができることもあってとてもこだわりが感じられる部分でした。OPやEDが高く評価されていることもそうですが、実はライブシーンで流れる曲を歌うバンドさんに対して、高校生らしさをだしたいからうまく歌い過ぎるなという指示までだしていたそうです。こういった曲へのこだわりが良い演出につながっているんですね。
声優さんも豪華で名演技が光っていましたね。
唯一弱点があるとしたら、キャラクターをしっかり掘り下げることができなかったことでしょう。比較的濃いキャラクターが何人もいるのに、実際に過去を振り返ることができたのはほんの一握りでした。1クールのアニメの中にいろんなものを詰め込んだ結果として生まれた不可抗力と言わざる負えないかもしれませんが、非常に高い水準で作られているだけに余計にもったいなく感じました。
演出に目を向けてみると、ゲームのシナリオライターらしく、シーンが変わる度にどこにいるか表示されたり、第一話の100コンボなどゲームっぽさがよく出ていました。感動的なシーンにおける演出もCLANNADなどの他の作品同様にとても素晴らしかったです。


ストーリーについて
内容について具体的に触れるのはやめて、テーマを考えてみると、やはり「理不尽な人生」を描いていることがキーかなという気がします。そこから派生して生きがいや生きる意味といったテーマを登場人物の過去に応じて与えていたのではないかというのが僕の考察です。誰のために生きているのか、自分は何者なのか、といったことが問いかけられることが多かったように感じます。


気になってしまった点
非常に良い作品である分、どうしても気になる点があるので、解決できる方はメッセージなどいただけると嬉しいです。{netabare}
1,終盤の自分の意志で消える生徒たち
ユイの話で成仏させるのに苦労していた分、音無の説得であれだけたくさんの生徒が一度に納得して自分のタイミングで一斉にいなくなってしまったことはどうしても納得できませんでした。卒業式のときも一人ずつ消えていくのは演出としては納得なのですが、消えるタイミングを自分で選ぶことができているみたいで違和感を感じてしまってます。
2,かなでのANGEL PLAYER
ANGEL PLAYERは終盤にNPCが影になる元凶となったソフトです。12話でゆりがそれを生み出したプログラマー(のNPC)と対面しているのですが、なぜあれをかなでが持っていたのかが謎です。一般生徒に手に入れられるものならもっといろんな人が持っていてもおかしくないと思うのですが、どうなんでしょうか?
3,AパートとBパートの間に入るワンカット
白地の中に心電図を思わせる赤い線とロゴが入っているあれです。あの時流れる音がピアノのソの音なのって何か意味があるんでしょうか?何かありそうなので気になります。{/netabare}




僕はアニメを見始めたわりと序盤に観て以降、今回レビューを書くまでになんだかんださらに二周してしまいました。とはいっても僕にとっては名作であることが明白で、レベルが高いのが災いして、どうしても作り手の主張が強すぎる、でき過ぎたが故に世界観に入り込みにくくなりがちな作品でもありました。そんな苦手意識があっても見返したくなってしまう、なんとなくもう一度みようと思ってしまうほどの魅力がこの作品にはあるなと今回改めて感じました。
まだ観ていない人は是非一度観てみましょう。観たことがある人も、このレビューを読んで「へえ~」と思えるところがあれば、作り手のこだわりを感じながら見返すと深みが何倍にもなります。だからやっぱりもう一度観ましょう。高評価も納得の素晴らしい作品でした。

投稿 : 2014/08/15
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サンキュー:

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