「惡の華(TVアニメ動画)」

総合得点
65.0
感想・評価
1147
棚に入れた
4514
ランキング
3575
★★★★☆ 3.2 (1147)
物語
3.4
作画
3.0
声優
3.3
音楽
3.4
キャラ
3.2

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ネタバレ

STONE さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 3.5 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 3.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

病気をひどく、こじらせちゃったみたいな

 原作は未読。
 好き嫌いは別にして、ロトスコープによる作画はとにかくインパクトがある。
 「これならそのまま実写でやれば」という声もあったようだが、アニメはアニメ独特の動きが
あり、実写の動きをアニメに導入することによる一種の異色感がこの作品の印象度を強めて
おり、そういう意味ではアニメならではのインパクトなのかなと。
 作品の内容が思春期の男女の感情を描いたものゆえにロトスコープが生み出す生々しさが
合っていると言えば合っているのかな。ただ、このやり方はかなりジャンルを選びそうで、
例えば日常系コメディなどで、これをやったら否定意見が凄そう。
 個人的には原作未読ということもあって、これはこれでありでしたが、原作ファンはやはり
原作の絵が動くことを期待していたのだろうし、こればかりはお気の毒にと言うしかない。

 展開的には春日 高男、仲村 佐和、佐伯 奈々子の3人の物語といった感じだが、仲村によって
内面を晒しだしていくことになる春日、佐伯に対して、最初から鬱屈した感情を持つ仲村は
かなり印象度が強い。
 まあ、大人視点で見てしまうと、こういう感情は思春期においては大なり小なりあるもので、
大人になる過程でかかるはしかみたいなもの。彼女の場合はそれをひどくこじらせちゃった
みたいに見える。
 この仲村の感情のありようは、自己の先天的パーソナリティや家庭環境も要因なので
あろうが、もう一つ自分の住む寂れて閉塞感のある街というのも大きいように思える。作画に
おいてはこの街の雰囲気が非常によく描かれていた。桐生市という実在の都市を出していたが、
他作品だと聖地と呼ばれてもてはやされることの多い作品舞台でも、この作品での舞台は負の
要素が強く、取り上げられても嬉しくなさそう。
 日常が面白くない仲村にとって、取り澄ましたように平静な回りの人間が本音を出せない馬鹿
ばかりに見えるのだろう。そして、自身の内に抱えるものを共有できる相手を欲していたように
思える。そういう意味ではクラスの中はちょっと浮いていた感のある春日という存在は体操着の
盗難事件の以前から、仲村にとって気になる存在だったのかなという気がする。

 その春日は己の内面を出さないという点では、仲村とは反対の位置にいるような人間だが、
高尚な文学を理解している自分は他人とは違うと優位性を感じているところなど、やはり回りの
人間を下に見ている点など、仲村に共通する要素は持ち合わせているように思える。
 佐伯とのデートにおいて文学を語るところなど思春期にありがちなスノビズム丸出しで笑って
しまうが、その春日に素直に感心してしまう佐伯も、これまた中学生という感じで面白い。

 演出的には序盤において、平穏な日常を描写しつつも、BGMなどで不気味な雰囲気を出す
など、日常を舞台に次第に忍び寄る恐怖を描くモダンホラー作品を思わせる演出だが、体操着の
盗難事件をきっかけにとりかえしのつかない事態に陥っていく過程や、それに伴い自分の心の
闇の部分が次第に表に現れてくるところなど、登場キャラの立場になって考えるとこれは一種の
ホラーかなとも思え、そういう意味ではよく合った演出なのかなと。

 キャストに関しては、春日役の植田 慎一郎は新人さんらしいが、新人特有の固さが春日の
うろたえっぷりと相俟っていい方向に転がっていたように思える。
 この春日の動揺などは一種のギャグにまで昇華していたみたい。
 ギャグと言えば、この作品は暗くシリアスなトーンの中で、しれーっと男顔に三つ編みの
クラスメイトがいたり、他にもどこまで本気なのか判らないような風貌のキャラが出てくるのが
面白い。
 仲村役の伊瀬 茉莉也、佐伯役の日笠 陽子に関しては、他のアニメ作品の演技とは異なる
印象。作品の内容、手法に合わせたのだろうが、印象としては実写の演技の近い感じで、両名の
演技の幅広さを改めて感じた。

 最終話において今後の出来事をフラッシュバックのように流していたが、今後は更に衝撃的、
かつドロドロした展開になりそう。先の展開が気になるが、本作品の評判やセールス状況を
考えると、まあ2期はないのだろうな。

投稿 : 2014/05/25
閲覧 : 277
サンキュー:

7

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