にゃっき♪ さんの感想・評価

2.8
物語 : 2.5 作画 : 3.5 声優 : 2.0 音楽 : 4.0 キャラ : 2.0 状態：観終わった

zeal without knowledge is a runaway horse

核施設の事故で汚染され廃墟となった東京を、部活帰りにしか見えない女子学生３人が都心に向かって歩いているシーンから始まります。
どうやら普通の人間はマスクや防護服なしには生存が不可能な場所のようで、事故の後に遺伝子操作でつくられたコッペリオンと呼ばれる彼女たちは、生まれながら耐性があり、災害救助に派遣された自衛隊の特殊部隊という設定です。彼女たちがこの年齢になるまで、作中では災害から20年は経っていると思われますが、その間の事はスルーして視聴する作品なのでしょう。手が込んでいる背景の作画には思わず見とれてしまうところもありましたが、人物の輪郭線が異様に太いのは気になりました。

おかしな関西弁を使うリーダー格の少女、成瀬 荊(なるせいばら)は、自らが生まれてきた事に存在意義を持たせようという姿勢は評価できましたが、涙腺が弱くメンタルに不安を感じますし、救助した人たちの精神面のケアにあまりに無頓着です。なお序盤では、機関銃の弾丸に当たらない特殊能力でも持っているに違いないと私は真面目に信じてました。
良すぎる視力を落とすために眼鏡をかけているという野村タエ子(のむらたえこ)は、動物と意思の疎通ができるようで、特殊能力者であることが序盤から示唆され、他のコッペリオンも能力者であり異能バトルになりそうな空気を予感させてくれます。
落ち着きがなくピクニック気分のような深作 葵(ふかさくあおい)は、事が起こればヒステリックにわめき散らし、役立たずで足を引っ張るあまりに不快なキャラです。存在価値がないように描かれているのは能力覚醒への伏線としか思えないわけですが、派遣メンバーに選ばれたのは、何でもお見通しの人がおられたのでしょうね。

救助部隊でありながらAEDの使い方も知らないなど、仕事に不慣れなアルバイトでも、もう少し教育されているはずです。これでは現場に赴くプロの技量について作者がなめてるようにしか思えません。最低でも特殊部隊ならそれ相応の装備や知識、技術を身につけ、冷静に仕事を処理するのを見せて欲しかったです。そうする事でオフとのギャップを魅力的に描いてくれれば、キャラに対してまったく違った見方が出来たでしょう。

主人公たちを人形と呼び、人間回帰をうたい、ヒューマニズムを扱うにしても、舞台装置にも疑問に感じる事が多すぎました。
難を逃れた人たちが20年も生き抜いてきた廃墟で、彼女たちがやって来てからの数日間で次々に起こる未曾有の大ピンチ、おかしな目的に使われている2000億円もするB2ステルス戦闘機、興をそがれるだけのビリビリ女子高生に巨大ロボットなどなど。ご都合主義を繋ぎあわせ、考証を怠り、他の作品から借りてきたような設定ではあんまりです。
ただ無能なだけにしか描かれていない政治家にしても、説得力がある価値観の凌ぎあいを見せてくれればずっと楽しめたであろう事を思うと、設定を生かしきれない残念な作品で、とてもお勧めする気にはなれません。