くらうち さんの感想・評価
4.4
物語 : 5.0
作画 : 3.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
機械と人間の境目
世界観自体が「人間とは何か」という問題提起になっていますね。
人体のあらゆる部分が「義体」として機械化でき、脳すら電子化してネットワークにつなげることができる。
そうすると、機械と人間の境目はどこになってしまうのか。
劇中では、「ゴースト」の有無がその判断要素になっています。
ただ、そのゴーストの実体が曖昧なため、観る人にいろいろ考える余地を与えてくれます。
映画版とでこのテーマの描き方に大きな違いをもたらすのは、タチコマの存在でしょう。
彼らは、経験を並列化することによってドンドン成長していく。
最終的には、最も人間的な行動の一つである「自己犠牲」までするようになる。
タチコマ達がバトーを助けに行くシーンでは、涙せずにはいられませんでした。
タチコマ達は、経験を並列化しているのにも関わらず、読書する個体が生まれるなど、個性を持ち始めます。
その個性は、何によって獲得されるのかいうと、素子は「好奇心」であると結論づけていますね。
単なる機械と人間の境目が、この「個性」の有無であることが、極限まで人間に近づいた機械であるタチコマから読み取ることができます。
もう一つ、この作品の大きなテーマの一つが、いわゆる「巨悪」ですね。
私利私欲を図るために、電脳硬化症に侵された患者のことなど微塵もかんがえずに、権力を行使する。本当に反吐がでる思いでした。
9課は一時は解散にまで追い込まれるのですが、最後は真実を白日の元に晒すことに成功します。
9課のチームワークは、スタンドプレイの結果であると課長は語っています。それぞれのメンバーが、それぞれの信じる正義を行うという強い思いを持っていることが、巨悪を打倒することができた9課の力の源泉なのだと思います。
このような、テーマやメッセージ性を持った作品というのは、数年に一度くらいしか現れません。
攻殻機動隊が、20年近く経ってなお、ファンを持ち続け、新しい作品が作られるのは、その先見性とクオリティの高さによるのでしょう。
素晴らしい作品でした。