退会済のユーザー さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
自主性の大切さ
■8月28日 文章を訂正
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小説原作。2002年~2003年にかけて、NHKで放送された作品です。
異世界ファンタジー。スケールはかなり壮大で、ストーリーは複雑な人間関係が絡むドロドロした物語です。
この作品を見ていると、癖があり、なんだか深みのある濃厚な雰囲気を感じます。心に染み渡るようなこってり感。
そう。まるで梅のような舌に残る味。
噛めば噛むほど旨みを増すような...そんな味。
私はそんな楽しみをこの作品を観て感じました。
とても味わい深いこの感覚....。
この苦痛と快感が混ざったような感覚こそが、この作品の魅力です。
■この作品の魅力
この作品は、三国志と比較されることがあります。作風も似ているという声もたくさん聞きます。
私は、三国志ファンですが、十二国記を観て抱いた感想は、三国志とは違った楽しさでした。
三国志は、人物の魅力や三国の入り乱れる野望などが、面白く感じて、ファンになりましたが、十二国記を好きになった理由は、これとは全く違います。
『王』とは何か?
『国』とは何か?
『民』とは何か?
といった壮大な世界観だから描くことが出来る『テーマ』や『中島陽子の成長』、『ドロドロした人間関係』などを好きになったのです。
強いメッセージ性を感じる『テーマ』
{netabare}
陽子が、他人の言葉を気にしすぎて、自分自身をしっかりと持っていない。
それが原因で、杉本さんから嫌われたり、景麒から諫められたりします。
それを揶揄するかのような目で見る家臣達。
陽子はそれにより、さらに周りを気にするようになりますが、最終的に自分で物事を決めるようになります。
{/netabare}
他人の顔ばかり伺っていては、他人の主観を押し付けられて、上手く利用される可能性があるということですね。
自主性の大切さ。それをしっかり描いてくれています。
最初は、こんな世界に連れてこられた悲しみを嘆く陽子。
彼女を見てみると、もっと普通の人生を送りたかったという悲しみが私の胸を突き刺すように襲います。
彼女を見ていると鬱陶しく見えることもありますが、私だって、無理矢理、別の世界に連れられれば、ああなるでしょう。
そういう普通の女子高校生が、少しづつですが王に相応しい人物に成長していく。
この変化を見ていく楽しみが十二国記の楽しみの一つです。
この書き方だと、なんだか苦しんでいる陽子を見て楽しんでいるような、悪趣味な楽しみ方だと思われそうですが(笑)
他の楽しみは、政治特有のドロドロした人間関係などなど。
また「陽子と杉本の関係」や、「大木鈴と浅野の関係」、「色々な所で人間が関わり合い」など
深い旨みがある関係性を見せてくれます。
ここも十二国記の魅力の一つです。
私はこれらの事を好きになり、十二国記に嵌りました。
■ストーリーや構成について。
1話~5話辺りまでは、冗長なシーンが続き、あまり面白くありませんでしたが、その後から、のめる込むように、この作品に嵌ってしまいました。
しかも、この作品は、私の思い描いていた展開とは全く違う展開を見せてくれたのです。
あえて、欠点を書くのなら、少しスローペースなところですがね。
深夜アニメの話の進行速度に慣れている人なら、十二国記の話の進行速度は遅く感じるかもしれません。
この展開に驚かせられました。一本取られてしまいましたね。。。
また、主人公視点だけではなく、様々な視点から物語を描きます。
主人公とは関係ない話でも、後々になって主人公の話と絡めてきたり、そういった所もストーリーの魅力です。
ただ、中途半端な所でアニメが終了しているため、伏線が回収されていない部分があります。
そこが残念な所です。続きが見たくて見たくてたまらない。
原作が完結しておらず、アニメも中途半端な所で終わってしまったのが悔やまれます。
音楽は、十二幻夢曲という曲がとても好きになりました。
EDの月迷風影という曲も、作風とマッチしていて、尚且つとても深みのある曲で、好きです。
■多数の視点から描く十二国記
タグに人生観が変わるとありますが、主人公が正しいと思っていた事が別の人の視点から観ると、全く違う事を思ったいたり、とにかく一人の視点のみで物語を描きません。
「何が正しいのか、何が悪いのか」を一つの視点から描かず、多数の視点から描くのです。
そして、私自身も自分の思っていた正しさに対して、反対意見があることをこの作品に突きつけられます。
私は、とある登場人物{netabare}(祥瓊){/netabare}に強い思い入れを持ってしまいます。
その人物は、知らなかった事なのに、責任を強いられ、数々の人物から迫害を受けたのです。
私にとっては、この人物の気持ちが痛いほどよく分かり、その人物に強い共感を持ってしまいました。
しかしながら、この作品では祥瓊が自分の責任に気付けなかった事が、罪であることをらくしゅんが説いています。
私は、知らなかった人間が悪いのではなくて、教えなかった人間が悪いのだ、とずっと思っていました。
でも、このアニメを観て、それだけじゃないということに気づかされました。
気づける状況であったのにも関わらず気付けなかったというのは、それだけで責任を問われることがあるのだなぁ、ということを社会はそんなに甘く無い事を学びました。
私がこの作品を見て、世の中には違う見方を持つ人間がいることを知り、新たな視点から物事を見つめられるようになりました。
正しくタグの通りでした。
人生観が変わる...とは完璧に言えないものの、新しい視点で物事を見ることが出来るようになりました。
■総評
メッセージ性がある作品、主人公の成長物語、ドロドロした人間関係が好きな人はおすすめです。
作風がドロドロした作品でもあるので、そういうのが苦手な方はおすすめしません。
ただし、最近の作品のようなテンプレ化された娯楽要素は、あまりないのでご注意ください。
(萌えシーン、厨二的なシーンなどなど)
全体的にかなり味わい深いストーリーでした。
深いテーマ性を高く評価して、私の中でこの評価にします。