OZ さんの感想・評価
3.8
物語 : 3.5
作画 : 4.5
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
戦車愛に包まれて
名前をよく耳にしていたのもあり
水島努監督×脚本 吉田玲子さんと
評判も良さそうなので
期待を込めて観る事にした
萌えと戦車の一風変わった話題作
■戦車愛に包まれて■
女の子と〇〇。
組み合わせ次第でどうにでも作品になりそうな
よくあるキャッキャウフフ物かと観ていたら
戦車に女の子と斜め上をいくアンバランスかつミスマッチな組み合わせ。
「男子って本当に肉じゃが好きなんですかね」と
至って普通の会話から
「T-34 76に 85に スターリンかぁ 硬そうで参っちゃうな」等
至って普通じゃないマニアックな会話まで幅広い。
登場人物が非常に多く名前を覚えられずとも
敵はともかく味方はパッと見で判別出来る為
記号の使い方に上手さが光る。
何と言っても目を見張るのは戦車の動きと音だろう。
キャタピラや砲台 動き一つとっても丁寧な細やかさで
特に各車輌毎の駆動音に違いをつけているのは恐れ入る。
また カメラアングルも抜群で
最終話ラストに
西住 まほとの1対1の対決は見事!と頷いてしまい
思わず高揚感を昂ぶらせる視点で
クライマックスをより際立たせている。
動いている時はCGだとハッキリ分かるのだが
よく見ると止まっている時もCGなのだ。
パースを合わせるのも大変だろうなと感じつつ
ただでさえキャラクターが多い今作品を
週間で作りあげるのだから
製作に携わった方達の熱と仕事量には頭が下がる思いだね。
隅々まで行き届いたマニアな拘りから
溢れ出す戦車愛に包まれるばかりである。
■試合であって死合いではない!?■
ここまでベタ褒めしているが
手放しで評価出来ない点も残る。
●戦車道と礼節
「戦車道」は作中において
礼節を重んじる武道であり
婦女子を育成する部活動の様な存在である。
後で認める事になるにしろ
対戦校の殆どが初対面の相手に対し
悪態をつき見下す発言を口にする等
これでは【礼節のある武道】には見えない。
騎士道精神ならぬ戦車道精神を
試合外でも貫いて欲しいものである。
●廃校
中盤から生徒会の河嶋 桃が勝利へ拘る裏側に
何かあるのは分かるのだけれど
負ければ廃校の話は
突然湧いて出た様で少々強引かな。
それだけ大事な試合にも関わらず
決勝戦で参加車輌数が増えたとはいえ
レオポンさんチーム(自動車部チーム)はまだ分かるが
バーチャルの経験しかないアリクイさんチーム(ネットゲームメンバー)
いわば素人を決勝直前に加入するので
廃校への危機感が希薄になってしまう。
案の定 試合開始直後にやられてしまうのだが
結果 運良く?あんこうチームの身代わりになり
勝利へ貢献するものの
猫の手を借りたい程人手が足りないとか
実は天才的な戦車乗りだった等
素人の彼女達を加える理由が欲しかったところ。
●安全面
最も気になったのが安全面。
上でも書いたが 戦車道とは健全な武道であり
戦争ではないのだ。
競技者保護の為 外部には装甲材を
車輌内は特殊なコーティングを施しているのだが
実弾を使用しているのには違和感が残る。
主人公 西住 みほをはじめ
競技者は度々戦車から身を乗り出し
「滅多に当たる物じゃないから」と説明するが
建物は吹き飛び 戦車が横転する程の威力なので
当たれば即死は免れないだろう。
剣道に例えるなら真剣を用いるのと同じで
武芸の域を飛び越えており
安全面への配慮は欠けている。
迫力を出す為に仕方ないのだけれど
行動不能になった際
ぴょこっと白旗が上がるシステムならば
実弾では無くペイント弾が妥当かもしれない。
「アニメだから」の一言で片付けられるのだが
あくまで戦車道は試合であって死合いではないハズだ。
■あとがき■
戦車の事は詳しくないけれど
話題になるだけあって
全12話 細かいツッコミや疑問を覆す程
期待通りの面白さだったよ。
欲を言えば あと1クール分は欲しいな。
テンポ良く展開した分
キャラの内面描写に
西住殿以外 厚みが無かったのは惜しい。
上手く完結しているので続きは厳しいだろうが
続編 またはスピンオフに期待を寄せたい作品だね。
満足度 ★★★★★★★★☆☆ (8)