にゃっき♪ さんの感想・評価
3.7
物語 : 2.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
もっと遠くへ
序盤は、ドンキホーテを連想させるKICK-ASSのような自称ヒーローの作品に思えましたが、7話終わりからの超展開は衝撃的でした。
この作品はヒーロー番組の限界や、ヒーローがヒーローになった動機や心理状態にまで踏み込んでいきます。私が、もっと現実的なエンタメ作品のつもりで視聴を始めた事もあると思いますが、視聴継続に苦痛を感じたのは私だけではないでしょう。未見の方は最初から覚悟を決めて視聴に臨んで欲しいと思います。
現在、世間的に見て成功していると思われているかどうかに関わらず、今の自分とは違った自分に憧れている人はいくらでもおられるでしょう。
自分が輝いていると思える場所に身をおきたいと願う事を否定はしませんが、医者であれ弁護士であれ、輝き続けるためには対極にマイナス要素の存在が不可欠です。
本来、正義の味方のヒーローは対抗する悪の秘密結社などがあって何か悪だくみをしていないと出番がないわけで、ヒーロー番組では、ワンパターンのお約束が毎週繰り返されます。視聴者に飽きられないようにするなら、スケールアップして刺激の強いものを用意しなければなりませんが、話を大きくし過ぎると視聴者の心が離れていくのを、この作品は身をもって実感させてくれたように感じます。
現実にヒーローたちがいて、怪人と戦っているのが日常になれば、いずれニュース番組にも取り上げられなくなるでしょう。
作品内で、やる気をなくしたり、戦いがいのある敵の出現を望んだりするヒーローも描かれています。
火事の原因のトップは放火です。消防士は火事がなければ出番がありませんが、自ら放火した消防団員(消防士ではありません)は実際に何度かニュースになっています。
自分を輝かせるための装飾品では意味がないわけで、後戻りできず手遅れになる前に、初心に還り、見失いかけたものを取り戻さなければいけません。
いくつになっても自立しようとしない子供、それを甘やかすしか術のない家族。
オトナになるとは、誰かのせいや時代のせいにしないで、自分の弱さと正面から向きあう事です。背伸びをせず、分をわきまえ、自分を受け入れてくれる相手に心を開き、感謝の気持ちを忘れずにいる事です。短所も含めて、お互いにありのままの相手を受け入れて横にいてあげる事が、互いの翼となり、遠くまで飛んで行ける力になれるように思います。