「妄想代理人(TVアニメ動画)」

総合得点
70.6
感想・評価
802
棚に入れた
4195
ランキング
1522
★★★★☆ 3.6 (802)
物語
3.7
作画
3.7
声優
3.6
音楽
3.7
キャラ
3.6

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ネタバレ

退会済のユーザー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8
物語 : 4.0 作画 : 3.5 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

言い訳探しの断罪

精神的に追い詰められた人の前(あるいは背後)に出現する「少年バット」。その謎の存在がガツンと一撃くだす現代都市伝説オムニバス。
次第に明らかになるのは、少年バットは無差別な暴力ではなく、「少年バットに襲われたせいで、こうなった」と被害者が被害者になったことに一様に“ホッとした顔”をしていること。
「言い訳探しに躍起になっているやつをぶん殴って笑おう」が企画意図だそうです(今敏オフィシャルサイトの“「妄想」の産物”より)。手厳しいですね。
温もりを抜いた高橋留美子劇場みたいな感じでした。
そこに力入れるか〜というところをグイグイさも面白そうに見せてくる。かなりえげつないです。

オープニングからして、平沢進の唄声が妙に壮大な使命感を帯びているかのように明朗爽快に響き渡りますが、その中にその気味悪い笑顔の絵をつけてくるか?!というシニカルさです。(『笑えない所で笑っている』コンセプトだそう)

描写はリアルな描き込みに重きを置いているので、スタッフの修行のような半永続的な仕事ぶりと、内容の断ち切るような鋭利な皮肉さとが対象的です。
しかし、一話ごとのキャラがいかに「言い訳探しに躍起になっているか」をネチネチ執拗に描くうちに、作り手の愛着のようなものすら滲んでいるように感じられます。「こいつどーしてこうなんだこうなんだこうなんだ!こいつはどォーーしても、こうなんだっ!」って所を考え考え考え考えて動かしている。そんな奴をそんなに思いやって理解しながら掘り起こせるのは、もう愛の技のようですよ…。

{netabare}
8話の待ち合わせ自殺の話はこれまでと全然ムードがちがって、浮いておりフンワリしてました。うつのみや理の作画が、目を見張る優れたバランス感覚で、実写のようです。

9話の団地妻たちの噂話。
「〜って言えば、思い出したワ、コレ、誰にも言わない?」で始まる噂話×10という、オムニバスの中に仕込まれるオムニバス。しかも10の噂話ごとにスタッフがついている…。この回だけは、贅沢にアホらしくて普通におかしくて笑えました。

10話はアニメ制作会社を舞台にした話に登場する「使えなさすぎる制作くん」…故・今監督のサイトの過去作品の記事に、おそらくこのモデルになった実在人物の話が載っていました…。もう何もするな動くな、という。こ、怖いよ〜

11話に登場の武蔵太陽病院。のちに今敏がガンを宣告されたのは武蔵野赤十字病院だそうです。
少年バットを撃退するものがあるなら、それはオバサンだろう、という今敏節。少年バットは人間のキレや逃げにまつわっているわけで、ど根性で家庭を守るオバサンにその精神性が通用しない。しかし、現実的にはこのオバサンはすこしおかしくなっているのが、今敏節の意地悪さ。家庭を守る自分という儀式的な土寄せで立っている、一本の枯れ木のような彼女。そこにわずかな水を与え続けているのが、帰らない夫が(タテマエにしても)かけた思いやりの言葉なのが、狂っても純情ですね。

馬庭や猪狩は何だか最後の方かっこ良かったです。明らかに普通のかっこよさとは全然重ならないけども。猪狩は「居場所がないのが自分の居場所ってことだ」と、やっとの自己確立。

最終回へ向けて、 巨大になりすぎた自分の嘘と良心の呵責にゴメンナサイして元に戻りました。
キーとして登場する、ゆるい癒しキャラクター「マロミ」はそんなに人を慰めるものでしょうか。たれぱんだとか流行りましたね。
そこまで過去を呵責に思える月子は、本来まじめなんだろうな、だから自分の気持ちをごまかせなかったんだろうなと感じました。そういう部分を他の人間にも伝播させ慰めるのが月子の生んだマロミ。月子自身は時に他人の中のごまかしを逆なでさせ、陰口を叩かれる。“みんなどうにかごまかして上手く立ち回ってんのに、何であんたはそんな無垢な顔して通して売れてんのよ”って。少女のような容姿でしたが、ひとつのごまかしに、ずっと気持ちが立ち止まっていたんですね。
ラストで新しい会社の制服に身を包んだ月子は、不思議ちゃんな個性は消えて、しかし芯の強さは残っているような軽やかな足取りに見えました。女の子にはたくましくあって欲しいです。(妙子は心配でしたが。妙子は、単に記憶喪失ではなく精神の安定した境地へ行ったことで、肉体を捨てたのでしょうか。そうすれば何もなかったようにお父さんと一緒にいられる。そんなオンオフみたいに捨てないで欲しいけれど。ダメ親父には後悔して欲しいものです。 ) {/netabare}


大人向けの怪しい痛快娯楽作品として楽しかったです。作り手がキャラクターに思いを込めて、行くとこまで行かせている責任感を感じました。(妙子は投げやりだったような…)


はい、「言い訳探し」しないように気をつけようと思いました。
今まで内的少年バットに出会った事があるかというと、…あるかもね〜怠惰ですねーダメですねー。ギリギリセーフで、生きています。他人からみたらアウトのときもあるかもしれません。

投稿 : 2014/05/14
閲覧 : 297

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