退会済のユーザー さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
ひとり歩きする自分のイメージ
R-15指定。
監督・今敏
脚本・村井さだゆき
深夜ラジオになぜかはまっていた頃、この作品のラジオも聴いていました。伝えられる劇場版の告知と相違点が混乱し、よく話の筋がつかめなかったのですが、映画の公開時に偶然観る機会かあり、そういうことか…と。ラジオドラマは、作品中で主人公未麻が出演するテレビドラマ「ダブルバインド」を描いた話でした。
劇場版の本作では、演じる自分と、アイドルだった時の自分と、普段の自分との現実との交差するイメージがとても細かく構築されていました。クライマックスにむけて虚実が入り混じる見せ方は、(今は実写でもCGでいくらでも出来るのかもしれませんが)アニメの技を最大限に使っているなぁ、職人な作品だなぁと感じさせられました。
未麻の暮らす部屋の中身がこまごまと描かれており、心理状態で段々と荒れていくところも丁寧です。
お風呂場に洗濯物が干してあるシーンの雑多な情景が生々しく、でもお湯を張っている様子だったので、あー、取り込まないと湿っちゃうよ〜、と心配になりました。このシーン、故・今監督のサイトの作品解説に記述があり、「リアルでいいと褒められたが、干したまま湯を張るのはどうかと自分では思った。しかしそれっぽいリアルさを出すことを優先した」とか。
何を入れる引くという差し引きが職人ですね。
お風呂シーンは他でも、未麻が身を丸めるように入っている所が、ワンルームの風呂の面積だといかにもそうだろうなというせせこましさがあり、リアルな描写はこういう人間の身体と背景の大きさの対比が大事だなぁと感じさせられ。計算して描いたのかなぁ、上手い人は何となくこなせるものなのだろうか?などと想像しました。
サスペンスドラマにありそうなサッパリした終わり方でしたが、未麻のその後の仕事ぶりもちらっとでも見たかった気もします。
ひとり歩きする自分のイメージ、って今監督の作品中によく現れたテーマですね。過去形で語る人物なのが残念でなりません。