rurube さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
スポーツアニメはこうじゃないと。
スポーツアニメや漫画で躍動感が無いとか試合展開がつまらないとか言う人がいるがだったら現実のスポーツ観ろよと思う。
スポーツアニメはあくまでフィクションなんだから現実のスポーツにスポーツ描写では適うわけがない。
じゃあ何が利点かといえばヒューマンの部分だろう。スポーツアニメはヒューマンドラマでスポーツの部分は核ではない。スポーツを通しての苦悩や成長、そして勝利を簡単に表してくれる一つの技法である。
ピンポン正直原作あまり好きじゃないんだけれど、どうやらちゃんと読んでいなかったらしい。この作品は登場人物のキャラ設定が素晴らしい。
才能が必要な人間に才能が無く、才能が必要ない人間に才能がある残酷さ。
アクマの努力は無意味であり、スマイルの才能は彼を孤独にする。
この世界はまるで質の悪いコメディーだ。誰がこの荒んだ世界を救うのか?
世界を救うヒーローの登場をスマイルと共に待つ。
7話観て気が付いたが之はスクールカーストものらしい。
アクマ部活辞めたってよ!ってことだろう。
社会にはピラミッド型の階級が存在する。そのトップに君臨しているのはドラゴンだろう。彼は頂点に立つ事を義務化されている。そこに挑戦したのがアクマだ。彼はピラミッドの頂点に登ろうとしあえなく落ちた。
スマイルは心を閉ざしているのはそのピラミッドの頂点に価値を見出していないからでは無いか。高い地位・高い賃金・誰もがあこがれる生活、そんななものに本当の価値はあるのか?
ドラゴンが頂点に君臨する理由は父の名誉の回復だろう。ピラミッドから転落した父に社会的な価値は無い。しかしドラゴンは知っている父がけして負け犬ではなかった事、それを証明する為には自分が頂点に立つしかなか無い事を。頂点に君臨するものだけがその価値を否定できる。社会は負け犬の言い訳は聞かないそう叔父の様に。父を認めさせるのは自分が勝者にならなければいけない、しかし皮肉にもそれは父の地位を決めたカースト制に入る事を意味した。ドラゴンは飛翔する事も這いつくばる事も出来なくなった。
この世界を救うヒーローはこの世界を破壊するものだろう。
ヒーロー見参!!ヒーロー見参!!!!ヒーロー見参!!!!!!!!
この作品で残念なのはドラゴンとの試合描写がいまいちな事だろうと個人的には思うが最終話見たら良かったと思えた。スマイルとの試合は描写も演出も入り方・タイミングどれも非常に良かった。
途中の7話から個人的に話を消化する事が出来なくて中10日のローテで観ていった。10話目からは普通に放送されたらすぐ観ていたからこそ良く分る、この話の核は7~9話だろう。観ていて痛々しかった。ドラゴンとスマイルが救われていないからチャイナとアクマいなかったら中20日のローテもありえただろう。
最後の2話は哲学的というかペコはアンパンマンだったよ。ドラゴンとスマイルはお腹が減って救いを求めていた。
この話の主人公はドラゴンとスマイルだと個人的には思う。この二人の苦悩が観ている視聴者が大なり小なり持っている苦悩なのだろう。最後に2人はヒーローに救われて良かった。救われるという言葉がぴったりなアニメはこのアニメぐらいなものだろう。
少し追加したいけどこのアニメはオリジナルの部分が非常に良い。チャイナのシーンはどれも意味が分りやすくて良い。チャイナは母国ではドラゴンやアクマと同じ一つの価値観の中で生きてきた。日本に来る事でその価値の外側からもの事を考える事が出来る様になっていく。
最後にチャイナとドラゴンは対比になっているが核の部分では同じだ。ドラゴンもチャイナも価値の外側に気がついた。だからドラゴンは日本代表から落選しても前の様に痛々しくない。卓球界の立場が対比に見えるが実際はそこに気がついた奴は皆同じ。
この作品好きな人はぜひ映画の「桐島部活やめたってよ」も観るべき、おそらく題材はどちらも同じで社会における価値観が話の核になっている。勝つ事だけが人生ではないから。
スクールカーストものの価値観ってまだ言葉になってない。正しい表現だと勝ち負けからの逸脱で自分の中での達観が表現として一番近い様な気がする。私の文章力では表現できないので観て感じて欲しい。