takekaiju さんの感想・評価
3.7
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
消化不良感は否めない―もう1クール長ければ良かった―
フラクタルシステムによって生活を管理されるようになって千年、人々はドッペルと呼ばれる電子分身体を利用して“自由”な生活を謳歌していた。一方で、システムに頼らなず人間が人間らしく誇りと尊厳を持った生活を主張するロストミレニアム運動が各地で散発する。ヴィンテージ好きの少年、クラインはある少女と出会うことで、世界の真実を求める旅へと出発する。
物語の舞台は、典型的なディストピア社会。
何不自由のないこうした管理社会はある人々には天国として映るだろうが、人間としての尊厳や誇りを大切にして働くことを生きがいとする人々にとっては地獄でしかない。管理社会を支える体制側と、それを打倒しようとするテロリストというわかりやすい二元対立図が生まれる。
この作品も例に漏れず、ドタバタに巻き込まれた主人公が成り行きでシステムの打倒を目指すテロリスト側に加担することになる。といっても積極的に闘いに参加するのではなく、あくまでも一緒に乗り合わせた少女たちを守るという理由で同行する。
壮大な設定と青春溢れるストーリー展開を1クールでどう表現するのか期待と不安を半分ずつ持って観終わってみると、消化不良感は否めなかった。
追手に追われる少女を少年が保護するというボーイミーツガール的展開を見せた一話目は、これから始まる冒険にわくわくするような良い展開だったと思う。だが、なぜロストミレニアムたちが執拗に反体制運動をするのか、なぜ権力に対抗できるまでの装備を持っているのか、なぜ千年以上前の道具が残っているのか、など物語が進むにつれて疑問が湧いてきた。最終決戦でいきなり敵本拠地に乗り込むというのも、商業アニメの打算が見えてきた不快だった。
物語の世界観や登場人物は良かったので尺をきちんと取って序盤でもっと丁寧に伏線を織り交ぜたり、回想を入れたりして視聴者が話にのめり込めるようにするべきだったと思う。
ただし、やっぱり日常が続いていくという物語の終わり方は好き。体制側が崩壊しても社会は変わらないというのはある意味で真実味を帯びているから。
EDにも使われているアイルランド民謡の『Down By The Salley Gardens』は、世界観にぴったりはまっていて良かった。変に近代的な冒険活劇調にしないで、アイリッシュな雰囲気を漂わせた中世ファンタジー風にしたほうが生かせたのではないか。