やっぱり!!のり塩 さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 3.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
本当は怖い日本昔話★
■評価
テーマ性 :★★★★☆ 4.5
ひねくれ度 :★★★★ 4.0
怒涛の展開度 :★★★★☆ 4.5
原作忠実度 :★★★☆ 3.5
おススメ度 :★★★★ 4.1
■ストーリー
呪力が人々の生活の糧となる近未来の日本で、幼少期
(和喜園=小学校)から、早季をはじめとする仲良しの5人組は
田園広がるのどかな環境で過ごしていたが呪力の芽生えと
同じくして世界の歪みに気付き始める・・・果たして5人の
運命はどうなってしまうのか?
■感想
原作小説もすべて既読です。
桃太郎・鶴の恩返し・舌きり雀・赤頭巾・三匹の子豚などなど
子供の頃に聞かされた昔話や童話は多々ありますが、それらの話は
人の行いや在り方を諌めたり、良き方向に導いたりする教訓や道徳感が
含まれていますが、実際の原作となった昔話や童話の本当の内容は
泣く子もだまる残酷で皮肉の利いた内容であったりします。
本作は正しく『本当は怖い昔話』を地でひた走る様な奇抜な世界観と
人間社会に皮肉を利かしたパンチのある作品と感じます。
本作のテーマは『悪しき人の業(行い)』になるでしょう。
序盤は長閑な田園風景と、それとは裏腹な違和感漂う世界観が
どこか居心地の悪い日本昔話を見ている様な気分にさせますが、
これも原作者の術中であり、話数が進むごとに明かされていく真実と
先を読ませない展開は、原作小説と同じくアニメ版も上手く
表現できていると感じます。
ただし、作画の崩れや物語序盤の世界観の説明不足と、ミノシロモドキ
の早計すぎる種明かしは、驚きを半減させている点で減点です。
原作の和喜園(小学校)時代の話は、つまらなくても世界観の理解の
ために全カットすべきではなかったと思います。
そして、本作の肝は上手くSFやファンタジー設定を利用して
隠していますが、人間社会への皮肉と深いテーマ性だと思います。
作中に以下用語が飛び交いますが、これを現代の言葉や意味に
置き換えてみると分かりやすくなります。
(若干のネタバレあるので嫌な方は飛ばしてください)
{netabare}
□悪鬼
無差別殺人者、通り魔など立場的な弱者や無関係な人を
傷つける人間。
□業魔
高慢、傲慢、怠惰、身勝手な行いをする人間。
たとえば列の順番を守れない人や、悪意ある言葉を言って
場の空気を壊したり、人間関係を歪める人の事…etc。
誰しもが当てはまる所があるかもしれません。
□愧死機構
自動死刑装置(人を諌めるもの、自制させるもの)
□不浄猫(ねこだまし)
必殺処刑人
本作からのメッセージとして、社会とは人と人とが共有する
生きる場所であり、そうにも関わらず人間はあまりにも残酷で
身勝手であり、他者を支配・管理し、社会の輪から外れる者や
乱す者を処刑しないと平和を保てない。そして処刑を続けても尚、
人は『悪しき人の業』=『暴力・憎悪・強欲』からは解放されず
同じ悲劇を繰り返す・・・『馬鹿は死んでも治らない』と皮肉って
いる様に感じます。
登場キャラに対してあまり愛着が沸かないのも、本作で家畜の様に
管理され生かされている様が、息苦しい現実の人間社会に生きる
自分の姿が多少なりとも映るからではないでしょうか。
本作は人間社会の在り方を問い、想像力をもってこの悪しき人の業を
克服した時に訪れるであろう新世界からの警鐘と希望のメッセージと
受け取れれば本作の面白さを十分に感じ取れると思います。
これにより原作者に対して嫌悪感を抱く方もいるかもしれませんが、
原作者の貴志祐介さんは本作以外にも人の悪意を描いた『悪の教典』
という悪鬼作品も手がけています。この事から貴志祐介さんも自身を
業魔として自嘲し、この『新世界より』という作品を原作者自身や
人間社会への愧死機構的な作品にしたかったのではないかと邪推して
います。
{/netabare}
総じて、私の日ごろの行いも業魔に近いものが含まれている
可能性があり、本作の皮肉はレバーに突き刺さるものがありました。
インパクトの強い作品が好きな方にはおすすめしたいです。
ご拝読有り難うございました。
アニメって本当に良いもんですねぇぇぇ。