「凪のあすから(TVアニメ動画)」

総合得点
90.4
感想・評価
6476
棚に入れた
25643
ランキング
55
★★★★★ 4.2 (6476)
物語
4.2
作画
4.4
声優
4.2
音楽
4.2
キャラ
4.2

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ネタバレ

2S-305 さんの感想・評価

★★★★★ 4.6
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

独自の世界を美しい作画と一貫性のあるストーリー・緻密な心情描写で描く良作ファンタジー

海と陸の両方に人間が住む世界において、愛憎や確執などを交えながら海にすむ「光」「まなか」「ちさき」「要」、光の姉である「あかり」や陸に住む「紡」「美海」「さゆ」らを交え描かれるファンタジーオリジナル作品。

青を基調とした映像で描かれる突拍子もない世界は、当初余りなじめないものでしたが陸世界と海世界の描写のあり方そのものに作品テーマがこめられておりました。

この作品の場合、海と陸を描きながらも海の表現として海面がまばやくばかりに輝くような明るい雰囲気はあまりなくひなびた情景が主だっており、ファンタジーながら陸上世界はかなり現実に近くリアルな描写で、陸上=現実、海中=幻想といった対比がなされています。
人々の心情描写も一線を越えるようなことはありませんがかなり生臭い部分も描かれており、陸に住むもの、海に住むもの、その狭間に位置するものそれぞれの想いや確執のなか、物語は進められていきます。

前半は陸上人の「紡」に憧憬にも似た感情を抱く「まなか」、まなかに魅かれる「光」、光を陰ながら思う「ちさき」、ちさきに想いを寄せる「要」、それに姉の「あかり」と潮留至と娘の美海のエピソードを絡めながら綴られます。
人間関係の相関図で考えると相当濃いものになっており、どことなく「トゥルーティアーズ」を髣髴とさせるものがあり、主人公にイラつかされる点も同様で、「光」の未成熟で直情的な愚昧さと「眞一郎」の鬼畜的な優柔不断っぷりはいい勝負だと思います。
そんなこんなで前半のラストでは海と陸の協調と確執の象徴である「おふねひき」の祭りの最中、一大事件が起こり、海に飲まれる者、陸に残されるものそれぞれの想いを封じ込めるように前半が閉幕します。

後半は怒涛の超展開、いきなり5年後です(クラナドか?)。
陸に残された「ちさき」は成長し見事に団地妻と化し、冬眠から目覚めた童の「光」を妖艶な色香で悩殺籠絡し・・・というのは冗談で(団地妻っぽいのは確かに事実ですが)、海の住人でありただ一人5年の歳月を積み重ねたちさきや陸の人々である紡、光と同い年まで成長した幼少時から光に惹かれていた美海らの前に、冬眠から覚めた光が現れ物語は再開します。

5年の月日による状況変化や心情変化。変わらないもの、変わるもの、変わっていくもの、変わらなければいけないもの、そして変わりたくないもの。それぞれの登場人物の葛藤。
後半のメインヒロインは美海とちさきといってもいいでしょう。
ようやく冬眠から目覚めるも海神様の力により「恋心」を失った「まなか」。この辺は陸に上がって声を失う人魚姫のようですね。
まなかを元に戻すために奔走する光、美海、それに協力する紡たち。
そして海神を鎮めるためにまたしても「おふねひき」が執り行われることとなります。

その後の展開は、ファンタジーというより和風テイストが強いので御伽噺的なものですが、御伽噺要素はこの作品を語る上で不可欠なもので、このあたりがクラナドなどと大きく異なる点であり、作品テーマの現実と夢や憧憬、変わっていくものや変わらないものなどを描く上で、なくてはならない要素であったと思えます(結果としてご都合主義的なものがあったとしてもです)。

この作品には結論的に「どのようにあるべき」といった押し付けがましいものはなく、それぞれの在り方に対しての感じ方は観るものに全て委ねられています。
それは、例えば「現実を見なければ生きてはいけない」と思うのと同様に「夢がなくては生きてはいけない」と感じる人がいる、というようにです。
その点で非常に一貫性があり、それ故に感情移入する登場人物は観る人によって全く異なることでしょう。

個人的には人間くさい生臭さを感じさせる「ちさき」や「あかり」「美海」などが特に気に入りましたが、
「まなかはどう考えても紡が好きだったんじゃないの?」
というところを必殺の切り返し、「羨望や憧憬≠恋愛感情」として光に一発逆転ホームランを与えた展開も「トゥルーティアーズ」の「乃絵」に対する眞一郎の感情と相似形ということで「ここもある意味一貫性があるな」などと興味深く感じてしまいました。

以上長々と書いてしまいましたが、ファンタジー・御伽噺の中にリアリズムをも含む作品というのはともすれば何が描きたいのかわからなくなり、大ゴケもありうる設定ですが、難しい挑戦的なテーマをゆるぎないストーリーと美しい作画で登場人物の心情の機微を含め描きききった「ここから始まる」と思わせる内容は秀逸で、物語を彩るオープニングや特に引きとともに流れるエンディングも内容に沿っていてすばらしかったと思います。

地味で生臭い色恋沙汰に耐性がある方には、特にお勧めできる良作だと思います。

投稿 : 2014/05/05
閲覧 : 374
サンキュー:

10

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