takekaiju さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
ストーリー重視の人におすすめ
環境汚染が進んで大気中にウイルスが蔓延する未来の地球。
人類は外気と隔絶されたドーム内での生活を余儀なくされ、「オートレイブ」と呼ばれるロボットの補助を受けながら完成された楽園のような暮らしをしていた。そんな安寧を壊すかのように自我を持ったオートレイブの暴走と、市民の惨殺が起こる。ロムド市情報局のエリート、リル・メイヤーは事件の調査で謎の怪物に出会い、人類存亡をかけた計画とドームの秘密に迫ることになる。
環境汚染、隔絶された空間での生活、人型ロボット、人口統制、管理と監視……
この作品にはお手本のようなディストピア社会が描かれている。誰もが幸せそうに見える表の世界と、その枠から外れ廃れた暗部。実社会でも既に見られている現象がより特徴的に、より深刻に描かれている点も典型だと思う。
物語の前半はロムド市内で起こった惨殺事件を中心に描かれる。オートレイブや街並の特徴からは、アイザック・アシモフの『I Robot』のような雰囲気を感じた。未来的で進んだ文明でありながら、どこか嘘くらい生活感のない社会。管理者木の描き方はいいのだけれど、重要な伏線もあまりないために単調で退屈な印象を受けた。
物語中盤、リルとビンセント、ピノの船旅の中で各都市を訪れる回がある。一話一都市の訪問で消費回かと思われるが、実は重要な設定が語られている。特にMCQの登場するクイズ回などは、それ以前と比べてあまりにもテンションが高いので面食らうが、後半の展開を理解するうえで重要な内容をさらっと描いている。
物語の展開として管理社会が描かれているが、この作品の最も重要なテーマは「自我の存在意義」の問いかけにあるのだと思う。作中で何度も出てくる「レゾンデートル」という言葉。自身が社会において果たすべき義務のような意味合いで使われ、レゾンデートルの喪失は絶望と同義である。他者や社会に対する存在意義を意味する「有用性」(冲方丁の『マルドゥック・スクランブル』より)に対して、レゾンデートルは社会において自身が果たすべき存在意義であるところが特徴的だ。ビンセントは自身が「人間なのか、プラクシーなのか」と旅中悩んでおり、ラウルは自分たちが不完全な人類であることを嘆いている。それぞれの人間が、オートレイブが自身の存在について悩み答えを求めているという状況は、管理社会を問う上で有効かもしれない。