sekimayori さんの感想・評価
3.9
物語 : 3.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
細うで繁盛記アニメ版?繁盛してないけど。 【74点】
突如祖母の経営する旅館で働くことになった女子高生・緒花の、個性豊かな従業員たちとの触れ合いを通じての成長譚。
まっすぐで一生懸命な主人公に元気をもらえる、NHKの朝の連続テレビ小説のような青春奮闘記でした。
【良い点】
①仕事の楽しさ、頑張ることへの素直な礼賛
②主人公緒花をはじめ、個性豊かで魅力的なキャラたち
③丁寧に描かれた老舗旅館の雰囲気
【悪い点】
①キャラ描写の不統一と、ストーリーのとっちらかり
■ここが好きです花咲くいろは
{netabare}
まず、「仕事」という主題を前面に押し出し、その中で努力や仕事の意味を描き出そうとしたこと。
単純に「みんなで働くの楽しいね」ではなく、職業人としての自覚や責任、地道な積み重ねの必要性、コミュニティ内での摩擦も描きつつ。
そのうえで、やっぱり「この場所で、この仲間と働くことが好き」という結論を提示しています。
仕事を美化しすぎかもだけど、そういう直球を投げ込めるのって素敵。
また、深夜アニメの対象とする若年層にこうしたメッセージを発すること自体に、少なからぬ意義を認めてもいいかもしれません(閉じた世界の住人に現実への扉を、とかまで言っちゃうと、かなりアレな感じになりますが)。
事実、私には刺さりました。
素直に仕事に対する羨望を掻き立てられるのは、社会の歯車たる視聴者にとっても悪いことだけじゃないだろうし。
花いろを観て旅館で働き始めた彼、まだ元気に勤めてらっしゃるのかな?
次にキャラ。
とにかく、喜翠荘の面々の暖かな雰囲気と緒花の「ぼんぼる」姿に魅了されます。
緒花はKYとか言われますが、まっすぐ頑張る女の子(cv.伊藤かな恵)がかわいくないはずもなく。
個性の強いキャラたちも、群像劇らしいエピソードの数々の中で輝いていました。
巴さんが生き生きしている7話のサバゲ回、発熱時の浮遊感の中で緒花と周囲の関係の変化を示した10話、菜子の心情を丁寧に描いた18話がお気に入り。
そして、美麗な背景や建物内をしっかり描くレイアウトによって醸し出される、雰囲気の良さ。
温泉街、和洋折衷の老舗旅館の、つい長逗留したくなる空気感が現実以上に描き出されていました。
うっすら靄がかかりそうな川沿いの朝の空気の清冽さとか、なんで再現できるんだよ(歓喜)!
PA作品を支える美術監督・東地さんのお仕事が素晴らしすぎるのか、撮影班が優秀なのか……。
また、お仕事アニメだから当然ではあるけれど、女将の部屋、帳場、板場、事務室、ボイラー室、狭い従業員の部屋など、外観や客室以外の描写も多かった。
それが逆に、喜翠荘の隅々まで手入れの届いた居心地の良さを感じさせてくれたような気も。
旅館とか泊まるとついつい厨房の入り口とか覗きたくなる性質なので(笑){/netabare}
■ちょい不満点
{netabare}
良い作品なのは間違いないのだけど、ストーリーの方向性の不統一と、キャラ描写の一貫性の無さは少し残念。
青春群像劇+成長譚では、キャラの成長のために物語を使いつつ、逆にキャラの自然な成長自体が物語を作るという循環形が理想。
実際、緒花については終始トーンが一貫していて、それはひとえに素晴らしいのです。
ただそれだけに、それ以外のキャラ描写が、物語展開に合わせて曲げられていたように思われるのが残念。
野暮に具体例あげると、1話では最低な母親がいきなり有能な仕事人扱いされたり、新人を一人で仕事場に投げ入れ引っ叩く理不尽人間に思えた女将が、一転して責任感あるいい人として描かれたり。
「仕事をしている大人のかっこよさ」を描くのには大賛成だけど、描写の落差を緩和する手当てが欲しかった感はあります。
若旦那や菜子も個別回で成長したかと思えば次のエピソードでは元通りと、少なくともアニメ的な文法から言えば違和感を覚える部分が目立ちました。
また、2、3話ごとのエピソード群も、仕事、日常、恋愛、学園生活など、主題が散逸した印象。
特に恋愛パートの結論のロマンチックさと民子の暴走は、岡田マリーさんのアクの強い部分が出たかなぁ。
朝ドラだったら孝ちゃんとはあれっきりで、徹さんとくっついてた気がする(笑)
もうこれは個人の嗜好でしかないのだけれど、変にドロドロとか学校の話を広げず、ホームコメディ・人情ドラマとして旅館だけを舞台にミニマルに描いてくれたら大好物でした。
ただコメディ系統って、PAWorksの美麗で扇情的な画作りには馴染みが良くないんですよね……。
そもそもその路線なら、まじで朝ドラでやれって話になるか。
うーむ(´・ω・`){/netabare}
【個人的指標】 74点
(2015.4.25) 再編とか