HUMMER さんの感想・評価
4.9
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
美しく、時に残酷で切ない世界
月刊アフタヌーンで連載していた原作漫画をアニメ化した作品。
このアニメの素晴らしいところはアニメ化に際し、絵の変化がほとんどないというところにあると思う。
この原作は独特の書き方で、まるで色のある水墨画のような雰囲気になっているのだがアニメ化しても見事にそれを再現している。
アニメ化した時に製作会社の書く絵柄になってしまうことは多いのでこの点は非常に評価できると思う。
さらに作品に合わせた音楽も素晴らしい。作品の世界を壊すことなく、より雰囲気を引き立てている。エンディングの曲はボーカルが無いが、その回の内容に合わせて毎回違う曲が流れるというこだわりっぷりでサントラを買う価値すらある思う。
原作を忠実に再現しているが故に原作の評価とほぼ同じになるが、幕末から明治初期辺りの時代の日本のような世界が舞台で「蟲」と呼ばれる基本的には人の目には見えない存在と人と世界との繋がりをテーマとしている。
ジャンルはSFの要素はあると思うが主にヒューマンドラマである。バトルなどの要素は一切ない、ゆっくりと世界に浸る感じの作品だと思う。
日本の野山や海などの自然を強く意識したとても色鮮やかな絵が素晴らしい作品。登場人物は当時の日本人らしい思想の持ち主が多く、家のしきたりや蟲や自然の摂理によって不遇な目にあっても自分の不幸を嘆いたりする人が少ない。故に読者はやりきれない切ない気持ちになることが多く、美しい世界がさらに残酷に見えたりする。だがそれがこの作品の魅力でもある。
個人的にはとっととカンヌ映画祭とか出せよと思うくらい日本の美しさを表現しているアニメだと思う。
比較的、大人向けだとは思うが素晴らしい作品なので是非多くの人に見て欲しい。