雷撃隊 さんの感想・評価
3.8
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 4.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
アニメ上級者のためのエッセイの筈が何故かメジャー・タイトルに
ケロロ軍曹がサンライズによりアニメ化と聞いた時、衝撃を受けた。まさかあの濃厚極まりないパロディーで最早エッセイともいえるあの軍曹が、と。しかも素で小学生に人気が出るとは・・・侮りがたし、ケロロ小隊。
この作品、極端にいえばサンライズと角川書店とバンダイがグルになった自社製品のマーケティングだろう。商売もここまでアカラサマだとむしろ清々しい。ガンダム、マクロス、ヤマト、999、EVA、宇宙刑事なんかのアニメ、特撮からサンダーバード、スタートレック等の海外ものまで扱うネタまで幅広い。映画じゃ実物のガンダムまで登場するし主題歌まで流れる。すげー。プラモデル講座もなかなか濃い。しかし商売の方法としては多少えげつなさを感じるのもまた事実。子供に直接ガンダムを見せるより軍曹を出先機関にして宣伝した方が効率いい、またスポンサーの言うこと聞かず「玩具促販CM」ではなく「自分の戦争映画」を作ろうとする富野や高橋や押井なんかよりプラモデルに精通した同人作家を利用した方が宣伝しやすい、という意図が見えまくりだ。この点はややいただけない。まあ若年層がこれをきっかけに富野ガンダムに興味もってくれれば御の字だが。僕も軍曹大好きだし好きな作品群のおさらいしているような気分になる。
本来はこれってアニメ文化に精通した上級者のためのエッセイであり学生の参考書に喩えると赤本やおさらい問題集だろう。こういう作品には弊害もある。基礎知識が無いくせにアニオタ気取ったり作品そのものを知らないのにプラモデルだけは買うような連中が増える。これでは空洞化だ。思えば90年代後半辺りからアニパロや全編楽屋トークで構成された半ば同人誌みたいなのがやたらと増えてジャンル自閉を続けてきた。軍曹もそういった作品群の延長だろう。結果濃いファンと一般人との二極化がやたらと表面化した。なんだかなー。ちなみにプラモデルの購買層は子供よりもアラサー以上が増えたしコミックマーケットの来場客は平均年齢が30を超えた。空洞化と二極化が進んだ結果がこれじゃアニメ文化もプラモデル文化も先細りだろう。このままじゃまずいだろう。
話が逸れたが僕はケロロ軍曹そのものは大好きである。キャストもガンダムやサンライズ富野作品に縁が深い声優が多い辺りも楽しいしケロロ小隊のメンバーとプラモデルやアニメのトークしている様な気分になる。大袈裟な言い方をすれば客と作り手とスポンサーにとって諸刃の剣の様な作品だろう。ある意味、恐ろしい侵略者である。