退会済のユーザー さんの感想・評価
3.7
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
捨てきれない幼心
触れることが叶わぬ恋を描いた作品。
主人公蛍が恋した相手のギンは、触れると消えてしまう。
なぜなのか、については他レビューを参考にして頂ければどこかに書いてあるでしょう。
これは、とあるアニコレレビューア様の画像を調べて知った作品だったのですが
世間体を気にしたものでなく、嘘偽りのなく書くと…泣きました。
…涙腺崩壊とまではいかないまでも、ティッシュ2枚分ぐらいじんわり泣きました。
40分程度のアニメではあったが、旨みが凝縮されているからなのか
どうも目頭が熱くなっていけない。
街から外れた田舎の山奥に、ファンタジー溢れるあんな世界があるって
シチュエーションだけで、もう感動は約束されたようなもの。
しかも夏しかそこに訪れる事が出来ないなんて切なすぎます。
昔、愛媛の田舎に住む従兄を好きになってた時期があって、その頃の気持ちを思い出したなぁ。
…私事はさておき、山神の森って妖怪が住んでるけど天国のイメージに近かった。
山の美しさがひたすら描写されてはいるが、その背景に妖怪の影が見え隠れすることで、
ギンと蛍、それ以外の人間が山に足を踏み入れない、二人だけの空間を強く演出する。
人と人で無い存在、夏と言う長くもあり短い同じ時間を共有し続けることで、
間を分かつ隔たりは、きっとすぐに薄く霞んで曖昧なものになっていったに違いありません。
月日が重なる毎に確実に心の距離は縮まっていく。
しかし、それとは反対に触れることが叶わない現実がもどかしさを伴い
近づいた距離だけまた跳ねかえす。
考えただけで切なくなりますね。
「私といるときぐらい、時々はお面を外してくれる?」
しかしどうしてギンは、蛍の気持ちに精一杯応えることをしなかったのでしょうか?
好きな人の気持ちにはなるべく応えてあげたいというのが恋愛描写の基本だと思うのですが。
時々は外していましたが、どうしてもそのどれもが意図して外したカットではなかったように映ります。
遡って考えると、作中でギンは"こんな面でもしてないと妖怪には見えない"と言っていました。
そう打ち明けた後、蛍が黙って微妙に真意を探るような沈黙があったことから、
このお面には、実はギンの成長を止めたり、生命力を維持する力が存在していたのかな、なんて
想像してみたり。
ラストでどうして蛍はもうあの場所にギンが来ないと直感的に悟ったのか、
私はずっと不思議だったんです。
もし、人間に触れる以外にギンが消滅しうるもう一つの可能性が存在するとしたら…。
そして、蛍がお面にそういう力を僅かなりとも感じとっていてたとしたら…。
お面を受け取った時、その行動に込めたメッセージに蛍はすぐに気付けたはずです。
妖怪が化けたような姿で会って居たくなかった、きとんと人間として蛍に接したかった。
もしくは就職して春も夏も秋も冬もずっと一緒に居続けると決意をあらわにした蛍に対し、
これを取ってしまったら長くは生きられないんだよ、というお互い通じ合う別れの返事であったのかも。
余計な妄想抜きにしても、ギンの自殺願望にも似た気持ちの表れで
お面を単純に餞別の品として渡したのか、はたまた、ギンが赤ん坊のようにそうされたように、
蛍にはずっと笑っていて欲しいというメッセージだったのか、見方によって
本当に様々な捉え方が出来ると思う。
尺としては短いけど、考える余地が生まれるアニメってとっても面白い。
間の取り方等も絶妙でした。また時間がある時、改めて見てみたいです。
しかし、幼少時代の蛍、色っぽすぎるだろ~(笑)。