しらこ さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
大切なものは、目に見えない。
日本のどこかを舞台に繰り広げられる近未来SF。
子供たちは「電脳メガネ」を通して見える世界に夢中だ。
だがそこには高度に未来化された世界が広がっているわけではない。
むしろ古き良き昔の日本。田舎町。とおりゃんせとおりゃんせが流れる横断歩道。夕焼けに染まる街。そして―――都市伝説。
そんなものが、この作品にあふれている。
冒頭数話は世界の説明で費やされていく。より深くまで潜るには、かけ水で体を慣らさなくてはならない。
話数が進むにつれて話も深くまで入っていく。
そこまでくればあなたも、ノスタルジックな街並みに、妙にしっくりと馴染む電脳世界のとりこになるだろう。
盛り上がりに欠けるわけじゃない。手に汗握る、まさしく近未来SF!と叫ぶような展開も待っている。
だが、この作品を終始支配するのは、根底に流れる「寂しさ」と「不確かさ」だ。誰とも分かり合えないのではないか、という「寂しさ」。自分の未来に対する「不確かさ」。それらは本当に、あるのだろうか?本当に、私たちは見つけられるのだろうか?登場人物たちの、すこし影が差した表情には、「思春期特有」の一言では片づけられない、そうした「人間誰しもが抱く漠然とした感情」が見え隠れする。
この物語を他と隔している要素の一つに、単純に浮き沈みを用意して視聴者を興奮させないようにする、「錨」が作品内に打ち込まれている、というのがあるだろう。光が射す日常の一幕にも、影がひそんでいる。温かい場所にも、冷たさが存在している。それらの「錨」が、私たちに疑問を投げかけてくる。
静かに進行する、こどもたちの世界。
電脳メガネで見える世界に、どれだけ「ほんとう」があるのだろうか。
彼らが悩み、迷い、笑いあい、涙する、その一部始終を是非見ていただきたい。
熟練した声優の演技もまた、静かに、悲しく、添えられている。
物語の主題に代えて、サン・テグジュペリの大著、『星の王子様』より
この一節をタイトルとする。