アニメ視聴記録置き場 さんの感想・評価
3.8
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
蟲であり神である
【物語】
各話で完結してるので大きな物語は見えなかった。蟲師の時代設定が江戸より以前の日本だと思うので、始まりがあり終わりがある直線的な人生観よりは、1年という周期で繰り返す円のような人生観のはずなので、明確に終わりが無い方が作風に合っていたのかもしれない。
【声優】
毎回登場するのはギンコ役の中野さんくらい。感情をそこまで昂ぶらせることのない役柄だけれど、飄々としてて人生を楽しんでる風な声が好きになった。
【キャラ】
こちらも語るのはギンコくらいか。あんなナリで気軽に色々な人に声を掛けても、そこまで不審がられないのは人柄かね。たまに凄く冷たい目をしてるのを見るとゾクゾクしてしまう。
【作画】
人物を派手に動かすわけではないけど、背景の美しさはこの作品ならでは。抜く所と力を入れるところのメリハリがしっかりしてる。
【音楽】
OPの仄暗い感じも良いけれど、劇中の効果音がとても素晴らしかった。雨や雪や風といった自然の音、山を歩いてる時の足音から遠くで聴こえる鳥の鳴き声まで、ヘッドフォンで聴いてるとそれだけで作中の世界に足を踏み入れてる気分になれる。
10話「冬の底(ふゆのそこ)」
晩冬の山を歩いていたギンコが、春の訪れと共に一時的に活発になる蟲をやり過ごそうとしたら、何故か冬に逆戻りしてという話。
登場人物がギンコのみというのも、ある意味では最終回らしい。本来なら予定されてた前後編の話は次回以降に持ち越しかね。風鳴りの音が綺麗だった。
山そのものが冬眠するという発想が面白い。生物を内包する場ではなく、生物そのものとして山を見る感覚は、アニミズムに通じるのだろうか。
9話「潮わく谷(うしおわくたに)」
行き倒れたギンコが助けてもらった一家と、その主人に巣食う豊穣ををもたらす蟲の話。
この作品にしては珍しく裕福な身なりの家が舞台に。特に子供がふっくらしていて、小旦那みたいな上着を羽織ってると印象が強まる。あまり不自由ではない人間が持つ余裕みたいなのがあった。
手を握るという何でもないアクションのアップが美しく思える作品もこれくらいか。演出の妙なんだろうな。
蟲の働きは論理で説明しきれるものでもないのだろうな。長ズボンにタートルネックの現代男性にしか見えないファッションだった。
8話「風巻立つ(しまきたつ)」
風を起こす蟲を口笛で操れる青年に纏わるお話。
蟲が岩に開けた穴を利用しての楽器というのは面白い。音色が口笛に比べてかなり間が抜けてるけれど、その抜け具合がとても自然で説得力がある。
ギンコの知己っぽい人が出てた。左目の丸はグラスだけの片メガネなのかな。ルパンとかもしてたけれど、どういう原理で固定されてるのか未だに知らない。
ギンコのタバコは蟲を遠ざける効果があるのだろうか。あれだけ体にまとわりついてても動じない辺り流石である。イブキの義理の母が倒れたのと比較すると、耐性みたいなのも高いんだろうか。
樹の上にいるイブキとの会話シーンが珍しく感傷的なBGMだった。
7話「日照る雨」
雨女や晴れ女という概念はどこが発祥なのだろうな。少なくとも年間を通して殆ど雨が降らない地域では生まれないだろうし。
冒頭の蝉時雨といい雨といい、ヘッドフォンで音を聴いてるだけでも気持ちがいい作品。テルという名前が照るを連想させて思わせぶり。子供時代はちゃんと子役を使ってるのも、この作品のいいところ。
雨の中、頬から伝う雫は雨か涙か。
6話「花惑い」
桜ほどあやかしが相応しい樹木も無いな。ギンコが息を飲むくらい美しい女性の外見をした桜の精が現れるのも納得する桜の美しさだった。黒にピンクというのは映えるなぁ。
しかし、あの女性の美しさは桜由来ではなく、前に訪れた薬を貰いに来た人だったのかしら。それとも、挿げ替え後に容姿が変化していくのかな。
ギンコは割とフランクに色んな人と接してるけれど、彼の外見で相手に怯えられないのは、やはり独特な雰囲気があるからだろうか。
5話「鏡が淵」
やや残念な黒髪美人さん。でも、自分で研ぎながらポタポタと涙が零れるシーンはとても綺麗だった。蟲師の時代設定を把握してないのだけれど、まだ金属板だった頃なんだろうかね。
最後にギンコが蟲を山奥に連れていくのは、どういう意図によるものだったんだろう。
4話「夜を撫でる手」
やっぱりこの作品は効果音が良い。山の中をさまよい歩いてる気分になる。フキの能力で手に入れた肉は臭くなるというのは、結果ではなく手段を重視する思想だよね。
内山昂輝演じる兄貴の乾いた声はこの作品とよく合う。コウキを手に入れて戻ってくるのが1ヵ月後という、その時間感覚も良いなーと思う。アニメーションも動く所と動かない所を使い分け、演出も込みで上質さを保ってる。
3話「雪の下」
雪を踏んだときのSEがしっかりしてる。
妹の喪失が自らの体温の喪失に繋がったのかな。生は暖かくて、死は冷たいもの。死んだように生きてたから、湖の底でも生きてた。とか考え出すと呼吸どうするんだよ、ってなるけどもね。
湖に落ちた幼馴染を引き上げ、背負いなが必死に家に戻る青年の演技が良かった
2話「囀る貝」
貝から出てきた鳥のような蟲が一斉に飛び立つ最後のシーンの美しさと、そこからのEDの余韻が堪らなく良いね。父親と網元のおっさん2人の演技が光る。
人間1人がフカに食われたにしては海が赤く染まりすぎで、父の主観としてのイメージかと思ったけれど、赤潮へ繋ぐための演出だったのね。