sekimayori さんの感想・評価
3.6
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
「そう、bakemonogatariならね」
怪異に遭遇した少女たちと主人公との交流を描く、青春伝奇風変化球系ボーイミーツガール。
西尾節の会話劇やシャフト演出から、ここでも絶賛されてますよね。
ただ私個人としては、確かに面白いけどそこまでか?って感じで高評価の嵐に釈然としない面も。
いや、捻くれ者な二人の物語は大好きだし、「戦場ヶ原、蕩れ」もめっちゃわかるんですが。
本作の魅力は各所ですでに千の言葉で語られてるので、どうせ今更レビューするんだし、天邪鬼にあえて辛口で書かせていただきたいと思います。
観てて思ったのは、スティーブ・ジョブズのスピーチみたいだなと。
大事なこと、伝えたいメッセージは何一つ含まれていないのに、語り方、自己の演出の仕方にただひたすら長けているために、万雷の拍手を以て熱狂的に迎えられる。
聴いてる瞬間は術中にはまって感極まったりもするけれど、そもそも内容を意図的に省いて構成された話なのだから、終わった後は「すごかったな」以外の感想が出てこない。
化物語についても同じことがいえるのではないでしょうか。
記号的なキャラ、会話劇、新奇な演出、豪華な声優、動画サイト出身の歌手、その他諸々で過剰包装した箱は、開けてみると実は何も入っていなかった、みたいな。
だから刹那的な快楽が去った後に残るのは、空虚さと、せいぜいその箱に詰めなおすことのできる使用済みティッシュぐらい。
「自分の想いは、ごまかすことなく、自分で背負っていかねばならない」という主題はあるけれど、それはひたぎクラブの段階で解決を見ているものであって、それ以降はキャラを増やして物語を続けていくための機構にすぎません。
まあそもそも「100%、趣味で書かれた小説」が原作だし、物語性をあえて壊した物語、むしろ中身がないことが中身、みたいなポストモダンっぽさ(?)が西尾さんのウリなので、この批判自体がお門違いというか、ただの難癖でしかないのですが。
アニメは単なる娯楽で、商品として消費してその刹那に快楽を享受できればいいという立場からは、高確率で傑作になりうるのでしょう。
アニメにそれ以上のもの、例えばメッセージとか人生訓とかを期待してしまう頭の固い人間やロマンチストからは、物足りなさが残ってしまうかもしれません。
ここまで偉そうなこと書いてきましたが、没入できなかったのは単にシャフト演出が肌に合わなかっただけって説も、実は濃厚だったり。
背景の平板さ・無機質さが人物の心情とリンクしづらく、どうも苦手です。
文字演出や赤齣・黒齣、シャフ度、スローモーションの多用も、話の流れをぶつ切りにしてるようで、新鮮さが薄れたまよいマイマイ以降は苦痛でした。
それこそ完全に主観というか、個人の好みの問題で、シャフトがすごいことをやってる!っていうのはとてもよくわかるのですが……。
あと、本放送時、なでこスネーク貮話の紙芝居で心が折れる音がしたのも今となってはいい思い出。
それ以外の面では普通に楽しめましたし、素直になれない阿良々木君とガハラさんのカップルには末永く爆発してもらいたいと本気で思います。
神原にも幸せになってほしいっていうか、お嫁に来てくれたら幸せにしますぜグヘヘ。
最後に、好悪の感情抜きで素直に感心したというか度肝を抜かれたのが、西尾維新の「売れる」作品を作り出す能力。
オタク層にドンピシャなキャラ造形といい、聴いてると自分の頭が少し良くなったかに錯覚させられる会話劇といい、意外とどぎついエログロ要素といい、「100%、商業主義で作った」レベル。
西尾維新、マーケティングの天才だろ。
アニメ化に際しシャフトと組ませたりsupercellをEDに起用したプロデューサーもまとめて、電通は役員待遇でヘッドハントすべき。
【個人的指標】 70点