蓬(Yomogi) さんの感想・評価
3.8
物語 : 3.0
作画 : 5.0
声優 : 3.0
音楽 : 4.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
タイトルなし
ジブリ作品を劇場で見たのは「魔女の宅急便」「千と千尋の神隠し」「ハウルの動く城」で4作目。
劇場で見る最大のメリットは音響だと以前書いたことがあるが、子供向け作品の場合は違う。
それは劇場に来ている子供たちの歓声を聞くことが出来ることだ。
ポニョが家の中を走り回るシーン。
ポニョから手足が生えるシーン。
ポニョが気に入らない相手に水鉄砲をかけるシーン。
ユーモアとイマジネーションが溢れる場面で子供の笑い声や歓声が劇場に湧く。
それは観客が作品に入り込んでいる証拠であり、子供がポニョたちと一緒になって世界を体感している証拠だ。
その感覚には凄い価値があるんだ、ということを大人になっても忘れないで欲しい。
アニメーションの高揚感ここにあり、と見終わった後しみじみ感じた。
とにかく超絶ファンタジー。
イマジネーションのわんこそば。
置いてきぼりをくらいそうです……。
まず一番に背景美術が素晴らしかった。
最近はリアル指向の背景がトレンドだったが、「そんなの関係ねぇ!」と言わんばかりのアート指向。
クレヨンのタッチが生き生きとポニョの世界観を立ち上げる。
子供の目を通した世界というのはこういった感じなのだろう。
ふくよかな曲線と鮮やかで素直な色使い。絵本の中に迷い込んだよう。
単独でも十二分に物語性の高い背景美術だと感じた。
また音楽が本当に豊潤で美しい。
今回の映画全体に感じたことだが、潤沢でたっぷりとした、まさに海の、自然の、絵の、それこそ想像力の豊穣を象徴した楽曲。
アバンは台詞が全くないのだが、おびただしい画力と贅沢な楽曲ですっかり世界観を見せつけられる。
もちろん作画は凄いの一言です。
生理的にうごく~~~。
そうそう、事前にNHKでやってた宮崎監督の特集を見ていたので
「鳥をちゃんと描け!」
と怒られていた(古屋勝悟さんらしい)ところの鳥の作画が気になってしょうがなかった。
そして一番良かったと思うのが主役のポニョが凄く可愛かったこと!
これは宮崎アニメでは珍しい。
宮崎作品の女の子は人間的魅力がないと常々思っていたのでけれど、この主人公はとってもキュート。
半魚人ポニョの顔が奈良美智の子供そっくりで
「ああ、こどもの本質って突き詰めるとやっぱこの顔になるんだ……」
などと感慨深い。
さて前半は良いのだが、後半が問題。
これはハウルと同じ感想で山場が分からない。
いつの間にか山場が終わっている印象なのだ。
起承……急。そんな感じ。
「脚本要らずの宮さん」と業界では言うらしいが、多分そのあたりが原因なのではなかろうか。
それでいいというのならいいけど。(誰が?)
もう、こういうアニメを作るスタジオはジブリくらいしかないだろう。
鈴木プロデューサーも「ジブリは宮崎駿の会社」とか「ジブリは終わらない文化祭(!!!)」とか発言している。
とにかく宮崎監督が元気そうで良かったです。